宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(61)
業種は違っても「人のふり見てわがふり直せ」(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届け! 今回は、医薬品製造の世界で起こった事件からの学びについてお話しします。
他者の経験を聞き、自分の糧とすることはどんな分野においても重要です。それこそが「学ぶ」ということの基本ともいえるでしょう。あらゆるものには学びがあり、自分を強くするための素材になり得るはずです。
それを強く感じることができるレポートが公開されました。ジェネリック薬品を製造する大手企業、小林化工が起こした品質問題を巡る、特別調査委員会による調査結果報告書です。
この“事件”は、小林化工が製造販売する水虫薬に、睡眠薬であるリルマザホン塩酸塩水和物が混入するという、医薬品製造においてあってはならないことが起きてしまったこときっかけに、小林化工の内部でいったい何が起きていたのかを明らかにしたレポートです。当然、これは医薬品製造における、多くの読者に取っては他業種の事件です。しかしその根本にあることは、おそらく多くの組織にとって耳が痛く、そして自らを振りかえる、いいきっかけになるものであるはずです。二度とこのような事件を起こさないために、いったい何をすべきなのでしょうか。
現場のヒューマンエラーで終わらせないこと
このレポートでは、ジェネリック医薬品の製造を行う小林化工が、日本における後発医薬品の使用促進施策に乗る形で大きく売上を拡大し、組織も拡大しつつある段階で起きたことであるとしています。当然ながら、内部における“管理”も行ってはいたものの、それがうまく機能しなかったことが、事故発生の要因としてあげられています。現場ではマニュアル通りの作業が行われず、本来行われるはずのダブルチェックも機能せず、従業員がおかしいと感じつつも、あり得ない方法で作られた薬が製造され、出荷されてしまったというのがおおまかな流れです。
しかし、このレポートでは、この混入事故の原因を「ヒューマンエラー」としていません。当初代表取締役社長が、「ヒューマンエラーが原因である」と説明したにもかかわらずです。これについてレポートでは、人間が過ちを起こすことは当然であるとしても、医薬品の製造プロセスは、それでもなお安全な医薬品を提供する仕組みを整えているはずだと述べています。
これ自体は、おそらく多くの製造業の現場でも行われていることだと思います。全てはドキュメント化された手順書を元に作業を行い、誰でも、漏れのない作業を行えるようにすることは、むしろITの世界よりも製造業の皆さんの方が理解されているはずです。
まさに、これと同じことを「IT」の世界でも行う必要があるでしょう。例えば特権ユーザーと呼ばれるようなアカウントでの作業は、1つのコマンドの入力ミスで取り返しの付かない状況が引き起こされます。2020年末に非常に盛り上がった「本番環境でやらかしちゃった人 Advent Calendar 2020」を見ると、多くの方がヒューマンエラーにより、大変な事故を起こしていることが分かります。
これらの作業も、ダブルチェックがしっかりと機能していれば、そしていま自分が行おうとしていることをしっかり理解していれば、事故は起きなかったかもしれません。しかし、ヒューマンエラーは必ず起こるものです。その前提で、余裕のあるスケジュールやレビューを行う人的リソースを用意することが、エラーを減らす、リカバーするためには必要です。それができるのは、チームのリーダーであり、マネージャーであり、経営層です。このレポートでは、「あらかじめ決められた手順を守る」ということが徹底されていなかったが故に起きたことであり、ヒューマンエラーと矮小(わいしょう)化してはならないことが分かります。
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
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