宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(60)
OSベンダーに学ぶ、製造業が知っておくべき「プライバシー」(2/2 ページ)
原則は「個人データは利用者のもの」 これを知らずに製品を作ってしまうと……
ここでアップルが大きくアピールしているのは、個人にひも付く、個人を特定し得る情報群である「個人データ」は、利用者のものであるということです。この原則を知らなければ、アップルが述べていることに違和感を覚えるかもしれません。しかし、少なくとも世界基準でいえば、個人データの所有権が個人にあることは常識と言えます。
特に日本では、あまりプライバシーそのものの問題が話題にならないため、この意識が薄れがちです。もしあなたが「自分の個人情報なんて、誰も欲しがらないよ」や、「個人情報っていったって、住所や電話番号なんてぜんぶバレてるからね」なんて思ったとしたら危険信号です。日本では個人データが“個人情報”という印象が強く、それが指すものが住所、氏名、生年月日、連絡先程度しかイメージされないことが多いですが、今回考えるべき個人データとは、それ以外にも個人を特定し得る情報全てを指します。この意識の違いがあったまま製品企画を行ってしまうと、IoT機器で収集した情報はメーカーにあると勘違いし、知らずのうちに利用者のプライバシーを侵害してしまう可能性があるのです。
特に全世界に対して製品を展開する場合、欧州のEU一般データ保護規則(GDPR)や米国の児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)などに知らずに違反をしてしまうと、多額の違反金を支払うことになる場合もあるでしょう。これは製品そのものだけでなく、その周辺のWebサービスやアプリでも同様の問題が起きえます。そうならないためにはさまざまな資料を読み解く必要があるかもしれません。その前にまず、「利用者として、プライバシーを考えてみる」ことを、個人的にはお勧めしたいと思います。
今回紹介したアップルの「あなたのデータの一日」は、その意味で非常に優れています。OSベンダーがここまで踏み込んだ資料を作るのは珍しいといえるでしょう。主に“広告”が個人データを活用しているのが現状ですが、OSベンダーが広告を取り扱うことも多く、どうしても広告に甘い仕組みになりがちだからです。OSベンダーでなければできないプライバシーの取り締まり方を見れば、これまで容赦なく奪われてきた個人データのコントロール権が、やっと私たち利用者に戻ってくることが分かるかもしれません。
そして、未来のIoTベンダーである皆さまには、利用者の気持ちを理解した個人データの取り扱いを行えるよう、自分自身が現状を理解していただきたいと思います。これは製品企画のメンバーやセキュリティの専門家だけが考えるものではなく、全ての従業員、特に経営者が知るべきものです。全員がこの原則を知っていれば、プライバシー問題を含む製品が作られることもないでしょう。
プライバシーは非常に難しく、いったい何が正しいのか、何が問題なのかが分からなくなるかもしれません。そのときには、外部の専門家に助けを請う、SI事業者にヘルプを依頼するなどが重要かもしれません。その上で、素晴らしいIoT機器を作ることができれば、それこそが自社の独自性につながり、ビジネスが成長するはずです。おそらくそれを世間では「DX」と呼ぶのではないでしょうか。
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著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!<漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ>』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる本です。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さんに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
この記事の著者
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