宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(57)
デジタル時代の「李下に冠を正さず」を考える(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届け! 今回は、楽天モバイル元社員逮捕のニュースから、デジタル時代におけるビジネスパーソンとしての立ち振る舞いを考えてみます。
ショッキングなニュースがありました。携帯電話事業を行うソフトバンクから同じく携帯電話事業を行う楽天モバイルに転職した社員(当時)が、前職での業務上の機密を持ち出したという疑いで逮捕されたという報です。ソフトバンクは営業秘密を「不正に持ち出された」と発表していますが、楽天モバイルは「当該従業員が前職により得た営業情報を弊社業務に利用していたという事実は確認されておりません」と真っ向から否定しています。
この事件そのものについては捜査が進行中であるため、これ以上の言及は避けますが、これは決して他人事ではないはずです。デジタル時代において情報の可搬性は高まっており、特に“クラウド時代”、そして“高速なモバイル通信”が可能ないま、ビジネスパーソンとしての立ち振る舞いも自ら律していかなければならないと感じています。
デジタル時代の転職マナー?
転職という行為が一般的になり、多くの方が実際に体験したことがあるのではないかと思います。私も数社を渡り歩いた経験がありますが、初めて転職した2000年のころはそもそも情報を持ち帰る方法が限られていたため、業務上のデジタルデータは全て削除した記憶があります。今から考えるとそれは正しい行動でしたが、ではいま転職をしようとしたとしたらデジタルデータをどうするだろうかというのはなかなか難しい問題のような気がします。なぜなら、クラウドストレージを使ってしまえば、簡単に持ち出すことが可能だからです。
おそらく多くの企業において、そのような行為はシャドーITの利用であり情報漏えいにあたるため、ポリシー違反とされます。しかし現状は企業が検知できない/していない大きな問題です。これまでであれば私もこんな現状は致し方ないと思えましたが、特に同業他社に転職する場合、転職活動を開始する以前にこのような行動をやめる必要があると強く感じました。会社のポリシーというよりも、転職時に痛くもない腹を探られることのないよう、自らを律しなければならないという意味です。
もちろん、企業としてはガバナンスを効かせ、情報漏えい対策の延長で従業員が不正に情報を持ち出すことがないように徹底する必要があります。これはルールとして決めるだけではなく、DLP(Data Loss Prevention)やCASB(Cloud Access Security Broker)といったITの力で検知し、警告/遮断できることが求められます。これこそが、ITの力で“従業員を悪者にしない”仕組みといえるでしょう。
問題は、そういった仕組みがない会社です。従業員はおそらく、最初は悪意なくファイルを自宅に持ち運ぼうとするはずです。ここで警告が出なかった場合、企業によるチェックが存在しないということを学習してしまうはず。ほんのちょっとの好奇心で情報を持ち出してしまうと、それがいつの間にかエスカレートしてしまう可能性があります。気が付いたらその気はなくても企業の重要な機密情報も持ち出したことになり、それが摘発されれば立派な「産業スパイ容疑」となってしまうわけです。
これは私の想像でしかありませんが、本当に産業スパイを行うのならば、こんな簡単に足の付く方法を選択しないという予感がします。サイバー犯罪者は痕跡を残さないよう細心の注意を払って、社内ネットワークを調べ尽くし、標的型ランサムウェアを実行していきます。もともと社内にいる本格的な産業スパイならば、全く気が付かない可能性があるでしょう。そう考えると、転職を考えている人はその瞬間から「疑われない行動をする」ことが重要なはずです。
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
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