宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(55)
セキュリティに力を入れるな? 狩野モデルに学ぶ“当たり前を魅力的に”(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届け! 今回は、品質管理の分野で大きな影響を与えた「狩野モデル」の考え方とセキュリティについてお話しします。
「狩野モデル」という考え方があります。恥ずかしながら私はつい最近この言葉を知ったのですが、顧客が求める品質という言葉をさらに分解し、「魅力品質」「一元的品質」「当たり前品質」に分けて捉えるというものです。
パッと思い浮かぶ“品質”は、もしかしたらこの分類のうち「魅力品質」を指すかもしれません。これは他の製品とは明らかに異なる、尖っている差別化要因を指します。顧客がどのようなものを欲しがるのかを探り、そのニーズに合ったものを提供できれば、優れた品質を持つ製品だといえるでしょう。
では、それ以外の「一元的品質」「当たり前品質」とはなんでしょうか。一元的品質であれば、不充足だと不満が発生するもの、充足していれば満足なものです。これはおそらく、その製品のグレードに相当するもので、スペック表に掲載しているような数値的なものに相当するでしょう。そして当たり前品質とは、文字通り維持されて当たり前の品質であり、機能として確実に確保する必要がある品質です。
では皆さん、あなたの組織において、製品のセキュリティは狩野モデルのどの品質に相当するものなのでしょうか?
当たり前品質は差別化要因にすらならない
個人的な考えでは、IoT機器におけるセキュリティ機能は「当たり前品質」に含まれるものと考えています。ほとんどの顧客はスマートフォンを活用し、PCも使いこなしている人でしょう。サイバー攻撃の現状についてもテレビなどの報道で知っており、PCに関してはセキュリティ対策ソフトの存在も理解しているはずです。もはやインターネットにつなげるデバイスは「何らかの対策があってしかるべき」と考えられていると思っていいでしょう。つまり、IoT機器は安全対策があって当たり前と思われています(私もそう思いたいです)。
日本科学技術連盟の狩野モデル説明においては、当たり前品質の解説として「どう考えても確保する必要があります。基本機能や製品の安全性などの面です。ここが守られないと、ネットのユーザーレビューなどで酷評されることになります」と書かれています。文字通り読めばサイバーセキュリティ対策も安全面における基本性能であると判断できる内容のはずですが、まだなかなかこの認識が進んでいないことが、IoT機器における脆弱性が直らない要因の一つなのかもしれません。
「ネットのユーザーレビューで酷評」という点で考えてみましょう。いまやこういった情報は(その真偽は別問題ですが)あっというまに広まってしまいます。それは狩野モデルの分類でいえば当たり前品質だと捉えられていることが大きな要因で、顧客目線で見れば「なぜ不十分な機能でリリースしているのか」「作っている人は自分で使ってみてはいないのか」など、不満が爆発してもおかしくないと考えられるからです。一度こうなってしまうと、自らがブランドを毀損(きそん)することになりますので、マイナスからのスタートをゼロに持っていくだけでもかなり難しいと思います。それだけに、セキュリティのとらえ方は慎重にならざるを得ないかもしれません。
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