宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(41)
「脆弱性検索エンジン」が必要な理由は(2/2 ページ)
より重要になった「設定管理」
このような「本来露出してはいけない情報が露出していた」事態は、昨今事故の原因として増えているような気がします。これまでITのセキュリティ対策といえば、マルウェアなどによる攻撃からいかに身を守るかという点や、格納されている情報を盗まれないためにどうすべきかに着目されていましたが、その以前に「隠したい情報が実は丸見えでした」というのが問題です。例えば先日も、ホンダが社内向けの全文検索エンジンをインターネットに公開してしまっていたということが明らかになったこともあります。この事例はたまたま善意のハッカーにより発見されましたが、こういった幸運はなかなかないかもしれません。海外でも同様に、購入見込み者のデータが公開状態になっていたということが明らかになっており、このような形での意図せぬ情報露出をどう防ぐかは重要になるでしょう。
問題は、こういった「設定」をしっかり管理するということに、監視の目が向けられていなかったということにあるでしょう。そのような抜けや漏れがあると、攻撃者や検索エンジンのボットが逐一情報を収集し、あるときに一斉にサイバー攻撃者の注目を集めてしまうかもしれません。
そのためには、こういったツールを私たち守る側が“利用する”というのも手段として正しいです。検索ツールを使い、自社に対して検索をかけてみる、脆弱性検査ツールを積極的に使ってみることで、本来は表に出てはいけない情報が露出されてしまっているかどうか、現状を把握できるかもしれません(ただし、これらの作業は必ずシステム管理者/ネットワーク管理者の許可を取った上で行うようにしましょう)。
そしてもう一つ、「バグバウンティプログラム」のように、高い倫理観を持ち技術力を遺憾なく発揮する「エシカルハッカー」「ホワイトハッカー」の手を借りるというのも、見えにくい設定ミスを見つける必要のあるこれからの時代は必要かもしれません。こういった方々はある意味“流しのセキュリティスペシャリスト”。高いレベルのセキュリティ人材が確保できないならこのような方々に期待するという方法もあるでしょう。ただし、その場合はしっかりとした報酬がなければ注目すらされません。ただし、よい仕組みが提供できれば、一気にあなたのシステムが注目されることになるでしょう。もちろん、その修正まではしてくれませんので、脆弱性報告後の受け入れ態勢も重要です。
SHODANやCensysといったツールは、JPCERT/CCが運営するインターネットリスク可視化サービス「Mejiro」のように活用される事例もあります。隠しているつもりのものも「見られている」と認識することから、セキュリティ対策が始まります。こういった検索エンジンの存在を知ることで、サイバー空間の認識も大きく広がるのではないでしょうか。(次回に続く)
◎併せて読みたいお薦めホワイトペーパー:
» 制御システムの「安全神話」は既に崩壊している
» WannaCryが明らかにした、生産システムセキュリティ「2つの問題点」と「2つの対応策」
» 2つの事例で理解する工場セキュリティ対策の考え方とソリューション導入
» 5分で分かるMirai
» セキュリティリスクから工場/生産ラインをどう守る?
著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!<漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ>』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる本です。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さまに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] 脱炭素投資をすぐ回収したい 自動車業界にも有効なCO2削減アプローチ -
製品資料
[株式会社 Green AI] 自動車業界の脱炭素はなぜ進まない? 実務で直面する“壁”の乗り越え方 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
ものづくり白書2026を読み解く
-
2
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
3
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:製造現場にフィジカルAIをどう実装するか――電子版2026年9月号
-
4
プリント基板設計の課題を乗り越えた成功事例集
-
5
Waymoの自動運転技術に迫る
-
6
IMUを活用してロボットの位置推定を強化、より高精度なナビゲーションが可能に
-
7
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
8
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
9
動き出したファナックの「フィジカルAI」
-
10
生産に関する知識の習得だけではNG? ものづくり人材を体系的に育成する秘訣
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー