商用3D CAD製品カタログ
DWGの2次元図面資産を有効活用し、無理なく3次元移行できる「Inventor」
製造業向けにオートデスクが提供するミッドレンジ3D CAD「Autodesk Inventor」は、他の商用3D CAD製品と比較して後発に分類されるが、DWGや他社CADデータとの連携および活用に強みがあるという。また、業界に先駆けてサブスクリプションモデルでの提供を開始し、初期導入コストを抑えた柔軟なライセンス購入をユーザーに提供する。
Inventorとは?[歴史]
製造業、特に機械・装置設計や工場設備のレイアウト設計業務に適した3次元設計ソリューションとして、オートデスクが提供するミッドレンジ3D CAD「Autodesk Inventor」(以下、Inventor)。
Inventorの最初のバージョンがリリースされたのは、1999年のこと。オートデスクといえば、汎用CADとして、建築、土木、機械設計の分野で広く普及している「AutoCAD」(1982年に最初のバージョンがリリース)が有名だが、Inventorは世の中にある他の商用3D CAD製品と比較して後発に分類される。しかし、当初からAutoCADのデータ形式であるDWGとの連携に力を入れて開発が進められてきたInventorは、2D CADから3D CADへと時代がシフトする中、2次元図面(DWGファイル)の資産を有効活用したいと考えるユーザーをターゲットにその認知度を次第に上げてきた。
この業界標準といえるDWG形式のファイルを、ネイティブに扱えることを強みの1つとし、Inventorはその時代やニーズに適した機能強化や、パフォーマンスおよびUI(ユーザーインタフェース)の改善などに取り組んできた。具体的には、DWGや他社CADファイル形式とのデータ連携性の強化、モデリング手法の拡充、設計・製造に関する各種機能強化、設計の自動化などが挙げられる(詳しくは後述)。また、AutoCADブランドの機械設計ソフトウェア「AutoCAD Mechanical」と電気制御設計ソフトウェア「AutoCAD Electrical」との連携強化、大規模アセンブリの表示パフォーマンスや操作性の向上なども図ってきた。
2017年4月に、3D注記の書き込みの対応や幾何公差アドバイザーの追加などが含まれる「Inventor 2018」を発表。そして同年7月にそのマイナーバージョンアップが行われ、「Inventor 2018.1」が現時点での最新バージョンとなる(原稿執筆時点:2017年8月)。
また、提供方式に関しては、2016年からオートデスクの全製品が従来のライセンス買い取り方式(永久ライセンス)を終了し、利用期間を柔軟に選択できるサブスクリプションモデルに変更。近年、3D CAD業界のトレンドとしてサブスクリプションモデルへの移行が徐々に進みつつあるが、その先駆けとなったのがオートデスクである。
以降、Inventorもサブスクリプションモデルで提供されることとなる。さらに、2017年からは、これまで業界/業種別に提供してきたソフトウェアパッケージ「Suite」の構成も見直され、複数のソフトウェア、クラウドサービス、技術サポートなどで構成される「業界別コレクション」として提供。Inventorは、製品設計と工場レイアウトに役立つツール群で構成される「製造業界向けコレクション」の中に含まれている。
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Inventorのターゲットと特長
Inventorのターゲットは製造業。その中でも、機械・装置設計や工場設備のレイアウト設計業務に主眼を置いている。
Inventorは、2次元の設計環境から脱却できないでいる企業、データ連携および活用などの課題を抱えている企業、そして製品の差別化に限界を感じている企業などに向け、豊富な機能群を提供する。それらは大きく「データ連携/活用」「多彩なモデリング」「設計・製造支援」「設計の自動化」「リバースエンジニアリング」の5つに分類できる。
(データ連携/活用については後述するが、)多彩なモデリングに関しては、さまざまな設計要求に対応できるよう、「パラメトリック」「ダイレクト」「フリーフォーム」の3つのモデリング手法をサポートする。ダイレクトとフリーフォームは「Inventor 2015」から搭載された機能で、特にフリーフォームはこれまで苦手とされてきた曲面形状を直感的な操作で作成することができる。設計・製造支援については、板金(シートメタル)、配管、配線の設計を支援する機能や、製造工程を支援するモデルベース定義(MBD)、3D組立図の生成機能なども有する。また、点群データを読み込んで設計に活用することができる。
そして、設計の自動化に関しては、可変パラメータを定義することで再利用/再構成可能な部品などを作成できるルール駆動設計機能「iLogic」をサポートし、製品設計における標準化、モジュール化を実現。
さらに、ジェネレーティブデザインの1つであるトポロジー最適化(位相最適化)を実現する機能「シェイプジェネレータ」の提供も「Inventor 2016 R2」から行っており、軽量化の追求と強度の維持といった相反する厳しい設計要件に対して、最適な形状を導き出すことが可能となった。
また、リバースエンジニアリングに関しては、3Dプリンタなどで使われるSTL(メッシュデータ)をInventorに読み込んでソリッドを作成したり、STLをダイレクトに図面化してそこに寸法を出したりすることができる。
前述の通り、Inventorをはじめとするオートデスク製品はサブスクリプションモデルで提供される。これにより、ユーザーはツール導入の際に掛かる初期投資が抑えられる他、プロジェクトの規模や期間にあわせた柔軟なライセンス購入が行える。さらに、常に最新版を利用できることから、設計部門で使用しているツールのバージョンの整合性を確保するのにも役立つという。また、製造業界向けコレクションを選択することで、Inventorを含めた本格的な製品開発プロジェクトに役立つツール群(AutoCADシリーズ、Navisworks Manage、3ds Maxなど)、サービスをすぐに利用できる。
Inventor、この機能に注目!
Inventorで注目したいのは、データ連携/活用に関する機能だ。Inventorには、DWG形式のファイルをInventor環境に直接取り込んで、そこから3次元部品を作成できる「DWGアンダーレイ」機能を備える。しかも単純なインポートではなく、設計変更が発生して2次元図面側のDWGファイルが更新されると、その変更がInventor側の3次元部品にも反映される。この機能を用いることで、豊富な2次元図面の資産をそのまま「正」としつつ、必要に応じて無理なく設計環境の3次元化を推進することができる。
また、設計現場の課題の1つとして、他社CADデータとのやりとりの手間がある。通常、他社のCADデータを取り込む場合、変換を行う必要があるが、設計変更が発生するたびの再変換が必要であったり、変換精度の問題でエラーが生じたりして非常に多くの労力を要していた。こうした課題に対してオートデスクは「AnyCAD」テクノロジーを提供。他社CADデータを“参照”の形で、まるでネイティブデータかのようにそのままInventorに取り込むことができ、元となる他社CADデータ側に設計変更が発生しても、その変更がInventor側にも反映される。AnyCADテクノロジーでサポートするのは、「NX」「Creo」「Pro/ENGINEER」「CATIA」「SOLIDWORKS」「AutoCAD」「Alias」「STEP」で、2017年7月にリリースされた最新バージョンのInventor 2018.1で、新たに「Solid Edge」にも対応した。
その他、Inventorは早くからBIM連携もサポートしており、BIMソフトウェア「Autodesk Revit」のネイティブデータ形式である「RFA」や中間ファイル形式の「IFC」への書き出しが可能となっている。これ以外にも3Dスキャンした点群データをInventor環境にインポートして、Inventorで設計した3Dモデルと点群データを同じ空間上で表示することもできる。
さらに、データ活用の視点では、グローバル展開に伴う複数拠点間での協調設計などにも対応できるよう、クラウドでのコラボレーションを支援する「A360」に設計データをアップロードし、離れた場所にいる関係者同士でディスカッション(チャット)しながら設計をブラッシュアップできる「コネクテッドデザイン」機能や、Inventorを持たない関係者との共有を支援する「3D PDF」機能なども提供している。
オートデスクの強みの1つは、業界標準であるDWG形式のファイルをネイティブに扱えることにある。そのため、3次元設計の重要性を理解しつつも、2次元図面の資産が豊富にあることから、なかなか3次元の設計環境へ移行できないという企業に対して、InventorのDWGアンダーレイ機能は無理のない3次元化、3次元による設計体制の構築を推し進める助けになりそうだ。また、他社CADデータとの連携、活用に役立つAnyCADテクノロジーに関しても世の中にある主要3D CADのファイル形式をほぼ網羅したことで、設計データのやりとりの効率化が図れるだろう。
そして、サブスクリプションモデルによる提供方式および製造業界向けコレクションによるオールインワンでのツール/サービス提供は、初期導入コストを抑え、ムダなライセンス購入費用を削減できるだけではなく、スピーディーな製品開発プロジェクトの立ち上げにも役立ちそうだ。
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