伸縮性導体
5倍に伸ばしても高い導電率を実現した伸縮性導体
東京大学の松久直司博士と染谷隆夫教授を中心とした研究チームは、長さを元の5倍に伸ばしても導電率が935S/cmという世界最高レベルを示す伸縮性導体の開発に成功した。
東京大学大学院工学系研究科の松久直司博士と染谷隆夫教授を中心とした研究チームは2017年5月、長さを元の5倍に伸ばしても導電率が935S/cmという世界最高レベルを示す伸縮性導体の開発に成功したと発表した。スポーツウェアやロボットの関節などにおいて、高い伸縮性を持つ高精度なセンサーや配線パターンを形成することが可能となる。
今回の成果は東京大学の研究チームと、理化学研究所創発物性科学研究センターの橋爪大輔ユニットリーダーや井ノ上大嗣技師らとの共同研究によるものである。研究グループは、テキスタイル上に塗るだけでセンサーを作製できる技術を開発してきた。2015年には、元の長さの3倍まで伸ばしても電気が流れる、印刷可能な伸縮性導体を作製している。
今回は、導電率と伸張性のさらなる改善を図り、世界最高レベルの性能を達成したという。新たに開発した伸縮性導体のペーストは、マイクロメートル級の銀フレーク粉とダイキン工業製のフッ素ゴム(DAI-EL)および、フッ素界面活性剤を混ぜたものである。このペーストとステンシルマスク印刷やスクリーン印刷といった印刷技術を用いて、ゴムやテキスタイルといった伸縮する素材の上にさまざまな形状の配線パターンを形成した。
新開発の伸縮性導体は、伸長前の導電率が4972S/cmである。この材料を元の長さの3倍に引き伸ばしても、導電率が1070S/cmを維持していることが分かった。この数値は、2015年当時の導電率に比べると約6倍となった。さらに元の長さの5倍に伸ばしても、935S/cmの導電率を得られることが分かった。「印刷技術を用いた伸縮性導体の導電率としては、世界最高値」と主張する。
新素材の構造を、走査電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。そうしたところ、ゴムにマイクロメートルレベルの銀フレークを混ぜるだけで、混ぜたフレークに比べて大きさが約1000分の1という銀ナノ粒子がフッ素ゴム中で合成される現象を発見した。しかも、ゴムや界面活性剤の化学構造などによって、銀ナノ粒子の形状や密度を制御できることも分かった。さらに、銀フレークは銀ナノ粒子と比べ、材料コストが約9分の1と安価であり、量産化に向けて大きなメリットになるという。
テキスタイル上に圧力と温度のセンサーを作製
研究グループは、新開発の伸縮性導体ペーストと伸縮性配線プロセスを用いて、テキスタイル上に圧力と温度のセンサーを作製した。その工程はこうだ。まず、伸縮性に優れたポリウレタン基材上に、センサーを全て印刷プロセスで作製。このシート状のセンサーを、テキスタイル基材上に転写した。この時、テキスタイル同士の接着などを行うホットメルトを用いて貼り付けた。
このような製造プロセスだと、伸縮性に優れたセンサーをテキスタイル上でも比較的簡単に作製できる。高伸縮性センサーを活用することで、人間の動きをより正確に読み取ったり、ロボットに人間並みの皮膚機能を持たせたりすることも可能になるという。
今回の研究成果は、英国時間2017年5月15日に英国科学誌「Nature Materials」のオンライン速報版で公開された。
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