メンター DRS360
安価なセンサーで「完全自動運転」を実現、カギは生データ
メンターがレベル5の完全自動運転を支援するプラットフォームを発表した。センサーからのRAWデータをFPGAで集中処理するアーキテクチャを採用することで、自動運転車に安価なセンサーユニットを組み合わせ、全体としての低コスト化を実現する。
メンター・グラフィックス・ジャパンは、レベル5の完全自動運転システムを支援するセンサーフュージョンプラットフォーム「DRS360」を発表した。カメラやレーダーなどから生成される各種データをセンサー側で処理せず、生データ(RAWデータ)のまま集約処理することでレイテンシ短縮や認識精度の向上を図る他、処理系を持たない安価なセンサーでもADASへの利用を可能とすることで、システムの低コスト化も実現する。
Mentor Graphicsといえば半導体設計に強みを持つEDA(Electronic Design Automation)ツールベンダーという印象が強い。しかし「Mentor Automotive」として自動車業界との関わりも深い。Mentor Automotiveは1991年にEDAの技術を用いた自動車向けケーブル/配線製品の出荷を行っており、2000年代には車載ビジネスを本格化、近年ではさまざまな企業買収もあって車載開発支援企業としての存在感を高めている。
Mentor Automotiveとして支援するのは「コネクティビリティ」「自動運転と運転支援」「電気自動車と支援技術(電可)」「EE(Electric Electronic)アーキテクチャとシステム実装」と多岐にわたる。しかし、同社では電化とEEアーキテクチャについては市場として成熟期に入っていると判断しており、コネクティビリティと自動運転の設計開発支援を強化していく意向だ。
強化対象の1つとして挙げられている「自動運転」。その中核をなすADASの開発は各社で積極的に進められており、レベル1~2の搭載車両も増えているが、車載システム開発という側面からすればシステムや調達の最適化と将来的なレベル5の完全自動運転実装に向けた拡張性の確保はあまり進んでいないのが実情だといえる。
自動運転システムについてはSAE(米国自動車技術会)とNHTSA(米国運輸省高速道路交通安全局)が2016年9月にレベル0~5の6段階に分類しており(それまではレベル0~4の5段階と定義されていたが、この定義で細分化された)、現在市販されている車両が備えるブレーキ支援や車線変更といった自動運転機能はレベル1~2に相当する。レベル3からは運転主体がドライバーから車両に移っていき、レベル5ではドライバーが運転できる全ての条件下にて、車両がそのタスクを担うことができる。
つまりレベルが上がるほどに車両は多くの情報を得て処理することが求められるため、センサーの搭載数が増加し、システムはより複雑になることが予想される。現在、自動運転機能を有する車両の多くでは、ステレオカメラやLIDARといったセンサーから生成されたデータはセンサーモジュール側で一部処理され、必要なデータだけが車線逸脱制御や車間制御といった処理を担う上位モジュールへ送られる。その後、上位も受ルールの処理結果は、CANなどの車内ネットワークを経由してHMI(Human Machine Interface)などで利用されている。
自動運転レベルの上昇に備えるため、ADASの見直しが必要となるというのがメンターの主張だ。米Mentorの一政貴志氏は「設計効率化の観点はもちろん、ADASの自動化レベルが上がれば上がるほどにセンサー数や処理タスクは増えていき、コストや複雑度、レイテンシは増大する。加えて、BOMコストも乗数的に増大していく可能性が非常に高い」と現在のADAS実装が抱える問題点を指摘する。そこで提案するのが「DRS360」である。
このDRS360においては、センサーからのRAWデータを使うためにセンサーメーカーのデータフォーマットに左右されない効率化が可能であり、より高度な自動運転に欠かせないとみられるセンサーフュージョンの実装時、「データ転送時のレイテンシ短縮」「認識精度の向上」「エッジノードにおけるデータ処理を削減することでのコスト減」といったさまざまなメリットをもたらすとしている。
具体的にはカメラやレーダーなどから生成される各種データをセンサー側で処理せず、生データのままFPGA(当初はザイリンクス「Zynq UltraScale+ MPSoC」を予定)にてセンサーフュージョン処理を行い、処理結果をSoC経由で制御を担うMCUへつなぐ。SoCはセンサーフュージョンの結果を基に状況を判断し走行計画を立てる役割を持つ。
完全自動運転車(自動運転レベル5車両)の開発に供するソリューションという位置付けだが、IPのみの提供も予定しており、導入側の条件によってレベル4やレベル3としての実装も可能である。なおFPGAでセンサーフュージョンと制御を行わず、FPGA/SoCの分離構成としたことについて一政氏は、「FPGAのパフォーマンス」「レベル5の実装方法が、顧客によって異なること」を理由として挙げている。
ISO 26262で最も高いレベルの安全性を要求する「ASIL D」準拠システムに展開できるように設計と検証が行われており、既に複数社と車両搭載に関する検討が進められている。「2017年の後半には何らかのかたちで実装された試験機を見せることができるだろう」(同社)。ちなみに、DRSは「DATA RAW SENSING」の略だ。
ADASにおけるセンサーフュージョンでは、ステレオを含むカメラやLIDAR、マイクなどが統合対象として想定される。DRS360におけるセンサーフュージョンアルゴリズムは自社開発されており、各センサーからの入力を元にした確率分布にて統合が行われる。入力可能なセンサーの種別は「FPGAが対応するか」に依存しており、将来的にはGPSやテレマティクスシステムとの連携も可能である。
各種センサーからの入力段にFPGAを採用することで、受け入れるデータ種別の柔軟性を持つ他、集中処理することでシステム全体の低消費電力化も実現するとしており、「完全自動運転を100ワット以下でサポートすることが可能になる」としている。
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