宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(92)
警察庁公開の情報を基に、ランサムウェアの現状を把握する(3/3 ページ)
ランサムウェア対策だけではない「バックアップ」の重要性と現状
ランサムウェアの多くは、データベースやファイル群を勝手に「暗号化」し、その復号のための鍵を人質にし、身代金を要求しています。現在ではこれに加え、不正に外部へ流出させた情報を公開すると脅す「二重脅迫」だけでなく、そもそも暗号化をせず情報流出を行う攻撃もあります。後者はランサム"ウェア"での暗号化がないため、これら全体を「ランサム攻撃」(ランサム=身代金)と表現することも増えてきました。警察庁の発表では、ソフトウェアのないランサムウェア攻撃として「ノーウェアランサム」という新しい言葉が使われています。
多重脅迫が当たり前であっても、事業継続のためには復号のための鍵を得るのではなく、バックアップからシステムを復旧することが重要でしょう。これに関しては警察庁の発表では、バックアップを取得していたと答えている企業が92%でした。が、復元できたと回答した企業はそのうちわずか19%。つまり、バックアップが不完全だった企業が多数を占めていることが分かります。
これはランサムウェアの攻撃の有無にかかわらず、非常に問題のある状況だと言わざるを得ません。たしかにバックアップは通常のシステム運用に含まれるものかと思いますが、「バックアップを戻す」ということが確実にできなければ、バックアップの意味が失われてしまいます。
この結果からは、組織におけるバックアップ状況の確認として、正しく「復元手順をまとめた手順書があるか?」を含めなければならないことが分かります。加えて、ランサムウェア攻撃の脅威が理解される前からバックアップの仕組みが作られていた場合、バックアップの間隔や世代管理が、現状には合わない可能性が非常に高いです。完全に復元できるバックアップ情報のセットが、最長で1カ月前になってしまえば、ランサムウェア時代の事業継続としてのバックアップにはなり得ません。警察庁の発表を見ると、おそらくその部分がアップデートできていないバックアップ状況だったのではないかと推察します。
バックアップの間隔を短くし、バックアップ世代を増やすことは、ストレージのコストに直結するものではあるものの、「そのコストを許容できればランサムウェア攻撃からある程度身を守れ、事業継続につながる」と考えれば、投資判断もしやすいのではないでしょうか。
発表された資料をチェックしつつ、複数の視点で判断しよう
今回ピックアップしたのは、警察庁の資料の、ランサムウェアに関する極々一部分のみです。その他にも、サイバー空間における実情がとりまとめられているので、ぜひ皆さんも一度目を通して見てください。
加えて、このデータに一喜一憂するのではなく、他の資料やニュースと比較し、その裏にある事情なども含めて判断できれば、「脅威インテリジェンス」を理解できていると言えるかもしれません。まずは現状を知ることから始め、自分の組織で何が足りないのか、もう一度確認するきっかけになればと思います。
著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!<漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ>』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる本です。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さんに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
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