Appleは訴えたのにAMDは見逃し、GLOBALFOUNDRIESによるTSMC提訴の背景:大原雄介のエレ・組み込みプレイバック(1/2 ページ)
エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回は、2019年8月の業界動向の振り返りとして、GLOBALFOUNDRIESによるTSMCおよび顧客企業への訴訟とその背景を考察する。
2019年8月もいろいろトピックはあったのだが、その中で今回は8月末に行われた、GLOBALFOUNDRIESによるTSMCおよび顧客企業への訴訟について取り上げてみたい。この話そのものはすでにニュースになっている通り、GLOBALFOUNDRIESがTSMCおよび顧客企業19社を訴えたというものだ。まずはこの話の前に、ここ最近のGLOBALFOUNDRIESの動向を少し紹介する。
2018年8月に7nmプロセス世代を無期限延期した同社であるが、2018年10月には同社のCustom ASIC部隊をAvera Semiconductor LLCとして子会社化し、2019年5月にはそのAvera SemiconductorをMarvellに売却してしまう。売却金額は約6億5000万ドル(+オプションで9000万ドル)である。
次いで2019年1月31日、同社のシンガポールにあるFab 3Eを台湾VIS(Vanguard International Semiconductor Corporation)に売却する。売却金額は2億3600万ドルで、2019年末に売却完了予定である。Fab 3EはもともとはCharterd Semiconductor時代に建設されたもので、200mmウェハで月産35000枚の生産能力を持っていた。
そして2019年4月22日、今度はNYのFishKillにあるFab 10をOn Semiconductorに売却することを発表した。売却金額は4億3000万ドルで、2022年末に売却完了となる。ただしFab 10では現在も生産が行われているので、2022年末に向けて次第にGLOBALFOUNDRIESの操業比率を減らしていき、その分On Semiconductorによる操業比率を増やすという、ゆっくりしたトランジションが予定されているほか、2022年から3年間はOn SemiconductorがGLOBALFOUNDRIESの製造委託を行う事になっている。このFab 10、もともとはIBM MicroelectronicsのBuilding 323というFabで、IBM時代には45/32/28nmの製造を行っており、現在は14nm FinFETプロセスの量産を(2012年に操業を開始したFab 8と併せて)行っていた。
そして2019年8月13日には、同社のFab 9(所在は米国Vermont)に置かれていたフォトマスク製造部門をTOPPAN PHOTOMASKに売却することを発表した。この売却と併せて、同社はTOPPAN PHOTOMASKと複数年のフォトマスク供給契約を結んだことも明らかにした。もともとFab 9もFab 10同様にIBM Microelectronicsからのものであり、Fab 9でアメリカ国内で利用するフォトマスクを全て内製していたが、今後はTOPPAN PHOTOMASKから供給を受ける事になる。ただ、Fab 1(旧AMDのFab36/38)に関しては、Fab 1内に設けられたAMAT(Advanced Mask Technology Center)で引き続きマスク供給を行う事になる模様(そもそもAMAT自体が同社とTOPPAN PHOTOMASKのJVの形で運営されている)。
……という具合だ。TOPPAN PHOTOMASKへの売却金額が不明ではあるが、まぁ1億ドルを下回ることはないだろうと考えると、大体この1年で15億ドル相当の資産売却に成功したということになる。これだけでも随分なものだが、ここに来てTSMCへの訴訟である。訴訟の詳細をまとめると、まず以下の表に示すような16件の特許侵害があるとしている。
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