最安で月額8円、初期費用なしのLoRaWANサービス:Senseway Mission Connect
センスウェイは、LPWAネットワークの1つであるLoRaWANを用いたIoT通信サービス「Senseway Mission Connect」の提供を始める。通信費は、初期費用なしで1デバイス当たり月額30円から。ボリュームディスカウントを適用すると、1デバイス当たり月額8円まで安価になる。
センスウェイは2018年4月13日、東京都内で会見を開き、LPWA(低消費電力広域)ネットワークの1つであるLoRaWANを用いたIoT(モノのインターネット)通信サービス「Senseway Mission Connect」の提供を始めると発表した。通信費は、初期費用なしで1デバイス当たり月額30円から。ボリュームディスカウントを適用すると、1デバイス当たり月額8円まで安価になるとする。現時点で設置済みの基地局は関東地区を中心に30カ所だが、三井不動産の協力のもと全国の主要ビル、マンションなどに設置を進め、2019年3月末までに国内の人口カバー率60%を達成するとしている。
センスウェイ 代表取締役の信藤薫氏は「2018年3月に電気通信事業者登録を終え『IoTのラストワンマイルを提供し、よりスマートな社会インフラを創出する」という当社のビジョンを広げていく体制が整った。本日から、LoRaWANを用いたIoT通信サービスであるSenseway Mission Connectを提供していく」と語る。
Senseway Mission Connectで用いられているLoRaWANは、無線局免許が不要なアンライセンス系のLPWAである。通信周波数は920MHz帯を使用している。通信の規格は世界で500社以上の企業が参加するLoRaアライアンスが策定しており、センスウェイは同アライアンスのコントリビュートメンバーとして規格や仕様の策定に提言できる立場にある。
LoRaWANの特徴は6つ。1度に送信できるデータサイズが242バイトと大きい「ビッグデータ」、ボタン電池1個で双方向通信を長時間行える「低消費電力」、最長125kmが可能な「長距離通信」、室内用ゲートウェイで隅々まで通信できる「室内でも利用可能」、1つのゲートウェイで数千デバイスの双方向通信が可能な「基地局の接続数」、電波干渉のある工場なども利用可能な「ノイズに強い」である。
LoRaWANは、フランスと韓国において、有力通信キャリアのオレンジ(Orange)やSKテレコムが全国レベルでカバーするなどLPWAとして普及している。一方、日本では、通信キャリアが実証実験を行ったり、一部企業が個別案件で対応したりなどにとどまっている。「全国対応する方針を示しているのはセンスウェイだけ。2016年3月末に全国をカバーした韓国から3〜4年遅れになるが、しっかり事業を拡大したい」(センスウェイ 専務取締役 最高営業責任者の神保雄三氏)という。
国内IoTデバイスの接続シェア10%が目標
Senseway Mission Connectで提供するのは、LoRaWANのゲートウェイとネットワークサーバになる。IoTとしてセンサー情報を収集するLoRaWANのデバイスや、ネットワークサーバで蓄積した情報を活用するアプリケーションは、ユーザーが用意する必要がある。
LoRaWANデバイスの管理はWebブラウザベースのツールである「Senseway Mission Connect Management Console」を用いる。センスウェイからSenseway Mission Connectに対応するデバイスを販売しており、「LoRaWAN Shield for Arduino」が1台当たり6400円、「LoRaWAN Shield for Arduinoセット」を1台当たり8000円で購入できる(税込み)。
通信費は、1日の接続回数が12回で月額30円、同48回で月額50円、同144回で月額100円となる(税別)。さらにボリュームディスカウントについては「200万〜300万デバイスを接続するような大口契約の場合で、月額8円までのディスカウントを提案できるようにしたい」(神保氏)という。
この他、サービスエリア外や未導入エリアで利用したい顧客向けにレンタルゲートウェイも用意した。室内用基地局が月額3400円(キャンペーン価格)、室外用基地局が月額1万9800円となっている(いずれも税別)。
神保氏は「センスウェイに入社する前に勤めていたニフティでも、IoTの事業に関わっていたがなかなかスケールしなかった。これはIoTをつなげるコストが高いというのが最大の理由だ。IoTは、いかにして安くたくさんつなげるかが重要。Senseway Mission Connectであればそれが可能だ。3〜5年後には、国内流通するIoTデバイスの接続シェア10%を目指したい」と強調する。
また、センスウェイではデバイス、インテグレーション、アプリケーション、セールス、クラウド、ビジネスクリエーションといったパートナーを募集しており、既に50社以上が加盟しているという。
Sigfoxと比べたLoRaWANの優位性は
アンライセンス系LPWAのIoT通信サービスと言えば「Sigfox」がある。日本国内では京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が独占展開を行っており、2018年3月には100万回線が利用され、人口カバー率50%を達成したと発表している。
KCCSによるSigfoxと比べると、センスウェイのLoRaWANは後発となる。神保氏は「実質1年遅れなので、まずはいかに早く追い付くかが目標になる。LoRaWANは、IoT通信サービスの提供者として競合する場合でも、基地局の共有や相互ローミングといった形で手を結ぶことができる。そういった施策も検討していきたい」と説明する。
通信規格の比較では、1度に送信できるデータサイズがSigfoxの12バイトに対してLoRaWANが242バイトと大きいこと、Sigfoxと比べて使用する周波数帯域が広い(125kHz)ことによる耐ノイズ性を挙げた。さらに「Sigfoxはその仕様から通信時間に20秒かかるが、LoRaWANは2秒で済む。またアプリケーションからデバイスへのダウンリンク通信だけを行う事もできる。Sigfoxはデバイスからアプリケーションのアップリンク通信とのセットになる」(センスウェイ 技術スペシャリストの山口知昭氏)としている。
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