宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(114)
“旬”を取り入れた「強いパスワード」の作り方(1/3 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。今回は、“旬”を取り入れた強いパスワードの作り方を紹介します。
日本国内でも、毎日のようにサイバー攻撃に関する報道が続いています。最近ではシステムの脆弱(ぜいじゃく)性だけでなく、「従業員個人の認証情報」が狙われ、VPNなど正規の入り口から正規のID/パスワードを使って堂々と侵入し、不正行為を働くケースが増えています。
私たち従業員個人ができることはそれほど多くありませんが、いくつか“最重要なこと”があります。その中でも数少ない手段の1つが、パスワードを強くすることです。とはいえ、パスワードについてじっくりと考えたことがある人は、どのくらいいるでしょうか。
これだけサイバーセキュリティの重要性が叫ばれていても、会社で適切なパスワードの作り方を尋ねる人はほとんどいないでしょう。また、家庭でも子どもに正しいパスワードの設定方法を教えられる人も少ないと思います。しかも、パスワードの作り方にも“旬”があり、あなたが知っている方法は既に時代遅れになっているかもしれません。
そこで今回は、2026年版の最新パスワードの作り方を紹介します。
教本は「NIST SP 800-63B」
今回紹介するのは、「NIST SP 800-63B」と呼ばれる文書です。これは米国国立標準技術研究所(NIST)が発行する「デジタルアイデンティティガイドライン」の一部で、ユーザー認証の要件を定義しています。2025年8月にアップデートされ、最新のパスキー対応が追加されるなど、まさに“旬”の資料となっています。
この中から、今回は身近なパスワードに関するポイントを取り上げます。
定期変更も記号必須も過去のもの? 最新のパスワード要件
NIST SP 800-63Bの「3.1.1.2 Password Verifiers」では、パスワードに関する最新の要件が記載されています。主な内容を要約すると、以下の通りです。
- 単一認証としてのパスワードの長さは15文字以上、多要素認証の一部であれば少なくとも8文字以上とすべき
- パスワードの長さは最大64文字まで許容すべき
- パスワードはASCII文字列の全てとスペースを使用可能にすべき
- パスワードはUnicode文字列(ISO/IEC 10646)を使用可能にすべき
- パスワードは「異なる文字タイプの混在」を要求してはならない
- 利用者に定期的なパスワード変更を求めてはならない(ただし侵害の証拠がある場合は変更を強制する)
- パスワードの作成方法のリマインダーなど、認証されていない利用者がアクセスできるヒントを保存してはならない
- 「最初のペットの名前は?」といった、知識ベース認証を使用してはならない
- 入力されたパスワード全体を検証し、途中で切り捨ててはならない
文書では「SHALL」「SHALL NOT」という表現で、何をすべきか、何をしてはいけないかが明確に記されています。中でも目を引くのは、「定期的なパスワード変更を求めてはならない」という点です。最近では日本でも、「パスワードの定期変更はむしろ悪である」という認識が広まりつつあります。多くの方が実感していると思いますが、定期変更を強制すると、パスワードはどんどん推測可能な簡単なものに近づいていきます。例えば「Password1」といった、攻撃者の辞書に載っていそうなパスワードを使った経験はないでしょうか。このような安易なパスワードの使用を防ぐためにも、定期変更は行わない方が安全です。
では、どのようなパスワードが“強い”のでしょうか。意外かもしれませんが、上記のルールの中には「記号や数字を少なくとも1つ入れる」という指示はありません。これも以前までのパスワード設定の定石でしたが、現在では複雑で覚えにくいため、必須とはされていません(もちろん、入れても構いません)。
上記のルールを眺めてみると、“強いパスワードの条件”が見えてきます。実は、最新のパスワードでは、複雑さよりも“長さ”こそが重要な要素となっています。「多要素認証」を使っていないサービスでは、パスワードの長さを「15文字以上にする」ことが、最も重要なルールです。逆に言えば、これさえ守れば、それなりに強いパスワードの運用ができるのです。
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
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