フォークランド島を爆撃せよ! ――大西洋を横断した壮大な「バケツ・リレー」:組み込みエンジニアの現場力養成演習ドリル(20)(2/4 ページ)
今回は、パズルをもとに、1982年に起きたフォークランド島紛争で英国が実際に直面した「難題」の解決策を探ります。組み込み系エンジニアは日々、処理方式でいろいろ悩んでいます。今回の問題が、「解決のヒント」になれば幸いです。
スタンリー空港を爆撃せよ
ブラック・バック作戦は、大西洋の赤道近くにある英国領、アセンション島のワイドアウェイク基地から、爆撃機を飛ばして6000km離れたフォークランド諸島のスタンレー空港を空爆する壮大な計画です(図1参照)。雰囲気は、「砂漠の横断パズル」に似ていますが、さらに長距離で複雑です。
この作戦では、上記の砂漠横断パズルの「探検家」役がイギリスの爆撃機、アブロ・バルカンです。航続距離が4000km程度なので、給油機に改造したホーカー・シドレー・ヴィクター(これが上記のパズルの「ポーター」役)による空中給油が必要となり、さらに、ヴィクターの航続距離も4000km程度なので、給油機にも空中給油し……と、何重にもネストする複雑な「アルゴリズム」になります。ソフトウェア開発技術者として、この「要求仕様」をどのように解決すれば現実的でしょうか? 以下の問題をもとに考えてください。
問題(制限時間3時間)
赤道直下の英国領にあるワイドアウェイク基地から、6000km先のフォークランド諸島にあるスタンレー空港を空爆したい。以下の条件の場合、爆撃機と給油機をどのように組み合わせるのが良いかのアルゴリズムをパズルではなく、現実的に考えてください。アルゴリズムの考え方の違いにより、得点が劇的に異なりますので、要注意。
①英国の威信をかけた爆撃なので、スタンレー空港を壊滅させることより、爆弾を1個でも落とすことが重要。
②爆撃機(バルカン)は退役寸前の旧式機で、航続距離が4000kmと仮定する。通常爆弾を9500kg搭載できるが、爆弾を減らしても、航続距離は伸びないとする。
③給油機(ヴィクター)も、同じく退役寸前の旧式機で、航続距離が4000kmしかないと仮定する。給油用の燃料を50m3搭載できるとする。50m3の給油を受ければ、爆撃機、給油機とも飛行距離が4000km伸びる(半分の25m3なら2000km伸びる)。
④給油機(ヴィクター)は、爆撃機(バルカン)と給油機(ヴィクター)の両方に給油できるが、バルカンは他の機に給油できない。
⑤給油機は、給油用の燃料を自分用に使えないとする。
⑥爆撃に要する時間はゼロとする。
⑦燃料切れによる不時着機を出してはならない。
解答その1:パズルとしての答え
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