沖縄の交通課題の救世主となるか!? 自動走行バスへの大きな期待と開発の現状:沖縄モノづくり新時代(8)(1/3 ページ)
エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や魅力発掘の後押しとなる。本連載の主役は、かつて“製造業不毛の地”といわれていた沖縄。第8回では、自動車を使えない高齢者や身体の不自由な方の移動手段として、その可能性が注目されるバスの「自動走行化」に向けた取り組みを、試乗体験の感想を交えて紹介する。
地方都市における公共交通の在り方は切実な問題だ。
人口が年々増加する沖縄でも例外ではなく、幹線道路では朝夕の通勤、帰宅時間に1kmを超える渋滞が日々発生する一方で、那覇市以外の市町村では地域コミュニティーにおける移動手段の充実が課題として顕在化している(図1)。
図1 高齢者や身体が不自由な方の移動手段をいかに確保するか、各地域の課題になっている。写真は今回の連載の舞台である沖縄県南城市を1時間に1本ペースで運行する路線バス。ちなみに、写真中のバス停の名前は「第二手登根(だいにてどこん)」
東京をはじめとした首都圏では電車や地下鉄が発達し、駅を中心に路線バスの交通網が張り巡らされている。これに対し、電車や地下鉄がない沖縄では、主な移動手段は自動車か路線バスに限られる(※1)。自動車を使えない高齢者や身体の不自由な方の移動手段をいかに確保するかが、課題になっているのだ。
※1:那覇空港駅から那覇市首里駅を結ぶモノレール(通称ゆいレール)もあるが、沖縄全体からすると範囲が狭く影響範囲は限定的だ。
このような課題を解消する可能性を秘めるのが、地域のコミュニティーバスや路線バスの「自動走行化」だ。仮にバスの運行が完全に自動化されれば、運用コストを引き下げられ、バスの便数や路線を充実させやすくなるというわけだ。
2017年3月20日〜4月2日の2週間、自動走行バスの実用化に向けて大きな一歩といえる取り組みが、沖縄県南部の南城(なんじょう)市で始まった。
内閣府が主催する自動走行バス実証実験の第1弾で、一般車両も通行する往復2.4kmの公道を使い、直進走行や駐車場での転回(Uターン)、バス停への停車、路肩に止められている車両の回避といった運転動作の自動化を検証した(※2)。「公共バスへの適用に向けた自動走行バスの実証実験は国内初」(内閣府)という。
※2:先進モビリティとSBドライブで構成される「沖縄自動運転コンソーシアム」が、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の1つ「自動走行システム」部門から受託し、今回の実証実験を実施した。
自動走行バスは地域コミュニティーの移動手段の課題を解決できるのか……。今回、自動走行バスに試乗する機会を得たので、自動走行バス開発の現状と、試乗後の率直な感想を紹介したい。
※お詫びと訂正:記事本文内での社名表記ミスがございました。訂正してお詫びいたします(2017年4月28日)。
公共交通網への生々しい課題感
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