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TSMC、Samsung、Intelが明らかにした次世代半導体プロセスの展望大原雄介のエレ・組み込みプレイバック(3/3 ページ)

エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回はTSMC、Samsung、Intelが2023年6月に発表したファウンドリー関連の話題を紹介する。

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Intel――IFSのビジネスモデルを変更

 TSMC/Samsungがそんな訳で今後のプロセスに関しての展望を語った6月であるが、Intelは2023年6月21日に投資家向けに“Internal Foundry Model Investor Webinar”を開催し、IFSのうちInternal Foundry Model、つまりIntel製品の製造に関して方針を変更する事を発表した。

 今回の骨子は、従来IFSにおいて社内製品に関しては、Allocated cost(製造装置の使用料に近い)のみを社内のBU(Business Unit)に請求する形になっており、IFSでの損益は外部の顧客からの分を元に請求する形にしていた(図7左側)構造を改め、外部の顧客も社内のBUも同列に並べ、それぞれに対してAllocation costではなく普通に請求する形に改めた、というものである(図7)。この結果として損益はこんな感じに変更される(図8)わけだ。

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図7 「何を今さら」と思わなくもないのだが、長年自社製品を自社製造で賄っていたIntelにとっては、この方が自然だったのだろう
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図8 もうIFSというかMFG部門からBUにAllocation Costを請求する事はなくなり、その代わりにMFGは製造コストに利益($10)を載せてBUに請求を出す事になる。この結果、BUの粗利は$100から$90に減り、MFGに$10の利益が追加される格好だ

 何でこんな変更をしたのか? Intelによれば、そもそもIFS 1.0で製造グループが独立した損益計算を行っていないというのが問題であった。同社は現在全ての事業部で粗利益60%、営業利益40%(いずれも非GAAPベース)を目標としており、これはIFSも例外ではない。ただIFSが現在外部の顧客をほとんど捕まえられていない(旧Tower Semiconductorの顧客がメインで、ロジックに関してはほぼ売り上げが全量社内の製品になっている)現状では、そもそもIFSの損益うんぬんを議論できる状況ではない。ただ実際には社内向けに結構な量の生産を行っているにもかかわらず、それが損益に数字として表れていないという現状では、社内的にはともかく対外的には「IFSは無駄に投資だけを費やして成果が出ていない」と見られても仕方がないし、これを是正しないと更なる投資の正当化は難しい。

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図9 2021年第2四半期以降のIFSの売り上げと営業利益

 図9のグラフは、Form 10-KなりForm 10-QにIFSの項目が掲載されるようになった2021年第2四半期以降のIFSの売り上げと営業利益をまとめたものである。そもそもTower Semiconductorを買収した2022年第2四半期であっても売り上げは1億2200万ドルほどでしかないし、2022年のForm 10-KによればIFSのIntel全体における売り上げの比率は僅か1%とされている。実際には社内向けに大量の半導体を製造している訳で、それをきちんと売上換算すればもっと売り上げが伸びてもおかしくない。実際Internal Foundry Modelにおいては、BUは外部(TSMCなど)を使う事も可能で、その場合TSMCに対して製造コストを支払い、それがTSMCの売り上げになる。であればIFSを使う場合はIFSに対して製造コストを支払い、それがIFSの売り上げになるというモデルの方が実情に近いだろう。

 2023年7月27日に予定されている第2四半期のConference Callにおいては、この新しい損益の計算方法で数字が示される事になるだろう。社内利用まで含めた時にIFSはどの程度の売り上げで、どの程度の利益を得ているのか、が明白にされるであろうし、それは投資家に対して「これだけの売り上げがあり、今後も伸ばすために投資が必要である」と説得するために必要な数字となる。逆に言えば、これを見える様にしない限り、これ以上のFabへの投資は既に投資家の理解を得るのが難しい状況になっている、とも考えられる。何というか、TSMCやSamsungに比べるとやや内向きというか後ろ向きの発表しか無されていないことが、ちょっと心配である。

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