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働き方改革で注目される「RPA」とは何か?製造業のIoTスペシャリストを目指そうSeason2(6)(1/2 ページ)

製造業でIoTを導入したプロジェクトを成功させるには、幅広い知識が必要です。今回はIoT(Internet of Things)の本筋から少しだけ離れて、今話題の「RPA」について取り上げます。

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なぜ、今RPAがブームなのか?

 ここ1、2年の間、ビジネスにおいて急に注目を集めてきた「RPA」。なぜ今、RPAがこんなにも注目されているのか。また今さらながら「RPAって何?」という疑問について整理してみます。

きっかけは「働き方改革」

 2019年4月から“一億総活躍社会”の実現に向けて施行される働き方改革関連法。多様な働き方を選択できる社会を実現するため、主に以下の3点に関する措置が講じられることとなります。

  1. 長時間労働の是正
  2. 多様で柔軟な働き方の実現
  3. 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

 ここで着目したいのは1つ目の長時間労働の是正です。残業時間の上限が、原則、月45時間、年360時間に制限されます。残業時間を減らすために人材を確保するなどはもっての外ですし、人件費などのコストも膨らみます。また、少子高齢化に伴う労働力人口の減少により人手不足は否めません。

 この人手不足を補いながら生産効率を上げるための一つとして注目されているのが、この「RPA」になります。

RPAとは

 RPAとは“Robotic Process Automation”の略であり、ロボットの一種です。ロボットというと「Pepper」やお掃除ロボット、産業用ロボットといったさまざまなものが思い浮かぶと思いますが、これらは専用のハードウェアを持ち目に見える形のあるロボットになります。

 一方、RPAは形が目に見えない“ソフトウェア型のロボット”になります。PCやサーバなどにインストールし、人が行うPCを使った操作を代わりに自動で処理してくれます。

 例えば、競合企業の製品価格を調査するためにWebサイトを検索し、該当する製品を見つけたら価格をコピーして、「Excel」の一覧表に貼り付ける……といったようなマウスクリックやキーボード操作の他、複数のアプリケーション間のデータのやりとりといった単純作業の繰り返しをロボットに覚え込ませて自動化します。

 このように、RPAはデスクワークを助けてくれる知的労働者という意味で「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」とも呼ばれています。

図1 単純な繰り返し作業などをサポートしてくれる「RPA」
図1 単純な繰り返し作業などをサポートしてくれる「RPA」

RPAでできること

 RPAは、主にPC操作を得意とするロボットです。さらに、繰り返し行える定型的な業務に適しています。つまり、経理や人事、総務などのバックオフィス業務の代行に最適といえます。具体的には、経費精算や売上集計、顧客データの管理などです。

 また、プログラミングなしでも活用できるなど、高度な技術がなくても自動化の設定が可能となり、大掛かりなシステム開発とは違って比較的低コストで、短期間に導入できることも特徴です。

 RPAでできる主な機能は、以下のようなものが挙げられます。

RPAの適用範囲: 
・キーボード、マウス操作の自動化
・画面に表示された文字、図形、色の判別
・異なるアプリケーション間のデータの受け渡し
・業種や職種などに合わせた簡単、柔軟なカスタマイズ
・エラー処理など条件による分岐設定
・ID、パスワードの自動入力
・アプリケーションの起動と終了
・スケジュール設定と自動実行
・蓄積されたデータの整理や分析
(・プログラミングが不要)


RPAでできないこと

 一方で、RPAでは“できないこと”もあります。それは、考えることです。その都度考えて判断する、または何かに配慮して判断しなければならない業務や非定型的な業務はRPAではできません。ただし、RPAはまだまだ進化を続けている技術です。そのため、今できないことであっても、AIを搭載して非定形業務の一部を代行したり、さらには意思決定まで自動化できるようになったりする日が近い将来くるといわれています。

RPAの進化

 現在のRPAは「クラス1」である“定型業務の自動化”が中心ですが、段階的にできる範囲が進化しています。

図2 「RPA」のクラスについて
図2 「RPA」のクラスについて

RPAの導入メリット

【生産性向上】

 RPAはロボットです。人間と違って休憩や休日は必要とせず、24時間365日作業することができます。また、人為的なミスも防ぐことが可能です。そのため、単純作業はRPAに任せ、人は付加価値の高い業務にパワーを注ぐことができるのです。

 また、導入に当たって業務プロセスを見直すことになりますので、作業効率の改善も同時に行うことができます。

【コスト削減】

 人手に頼っていた業務を自動化することによって、人件費の削減効果が見込まれます。RPAの導入費用や研修など一定のコストはかかりますが、代替する業務の洗い出しを適切に行い最適なツールを選んで運用することで、導入、維持費を人件費よりも低く抑えることができます。

【労務問題の回避】

 休みなく働かせてもロボットは文句を言いません。また、単純作業のマンネリ化からくるモチベーションの低下も引き起こしません。メンタル面の複雑な管理が回避できる点もメリットの一つです。

RPA導入の留意点

 最後に導入に当たっての留意点を確認します。現状のRPAが得意とするのは定型業務の自動化です。非定型的な業務に当てはめようとするとロボットの設定や変更に要する時間が増え、かえって労働時間やコストがかかってしまうことが懸念されます。

 そのため、まずは業務の洗い出しを十分に行い、業務を見える化し、どの業務が適しているのかを見極めることが必要です。既に業務手順がマニュアル化されているものは適用しやすい業務と考えられます。その上で、自社業務にあったツールを選択することが重要になります。

今回の問題

 それでは、RPA関連の知識・スキルアップに役立つ問題を出題します(※)。

問題:

RPAは、従来よりも少ない人数で生産性を上げるための手段として注目されています。しかし、全ての業務がRPAに適しているかというとそうではなく、不適当な業務をRPAで行おうとすると、かえって生産性を低下させる原因にもなり兼ねません。RPAに適する業務として、最も“あてはまらないもの”を1つ選びなさい。

  1. 社員から提出される交通費請求書に対して、Webサイトを使って交通手段の確認および移動区間の経費が適切であるかどうかを確認する。

  2. それぞれの取引先により同じ製品の注文でもタイミングにより発注単位や単価が異なるため、オペレーターが個別に確認を行いながら発注処理をする。

  3. 手書きの定型伝票をOCRで読み込んでデジタルデータに変換し、社内シムテムへ登録する。

  4. 顧客からメールにて送付されるPDF形式の伝票を一括して社内システムへ登録する。

※本連載の設問が実際のIoT検定にそのまま出題されるわけではありません。


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