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中小製造業のIoT活用に向けた“第一歩”、レガシーなITインフラの現実的な刷新手法とは日本鋳鉄管の実践事例を紹介

自社の工場内に置かれたサーバを、実質1.5人のIT部門が昼夜を問わずの対応で管理――。水道インフラ関連製品の製造を手掛ける日本鋳鉄管は、IoTの活用や経営の効率化に向けて、そのボトルネックとなっていた既存のITインフラを刷新。IT部門の業務効率化や、IoT活用の基盤構築を実現した、その段階的かつ現実的な手法とは?

» 2020年01月15日 10時00分 公開
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中小製造業のIoT活用、その第一歩を踏み出すために

 製造業におけるIoT活用に注目が集まっている昨今。こうしたIoT活用の動きは、大企業に限った話ではなく、人手不足や技術継承、市場変化への対応など、多くの課題に直面している中小製造業にとっても、“生き残りを掛けた一手”として注目されはじめている。

 しかし実際の現場では、「ITを活用するといっても、どこから始めたら良いのか」「現状のIT部門の人材リソースでは対応すること難しい」など、多くの課題があるのが現実だ。IoT活用を検討するどころか、「既存のレガシーなITシステムの運用保守だけで手一杯」という企業も多い。とはいえ何も手を打たないわけにはいかない状況の中で、どのような一歩を踏み出すべきなのか――。

 こうした悩みを抱えていた一社が、水道インフラ関連製品の製造を手掛ける日本鋳鉄管(東京都中央区)だ。同社はこれまでコストの問題から基幹システムのサーバを、自社工場内の一角という、“脆弱”ともいえる場所で管理しており、その運用保守に「実質1.5人」という限られたIT部門のリソースを全て割かなくてはいけない状況だった。市場環境が悪化するなかで、経営の効率化や生産領域でのIoT活用が急務であるものの、こうした既存のITインフラが足かせとなり、第一歩すら踏み出せない――まさに袋小路の状況に置かれていたのだ。

 そこで日本鋳鉄管は、ITインフラの刷新を決断。製造業にとってハードルが高い、“一足とびに全てをクラウドに移行”ではなく、段階的かつ現実的な手法でのITインフラの刷新を図り、BCP(事業継続計画)対策や、IT部門の業務効率化、そしてIoT活用の下地となる“基盤”の構築に成功したという。一体どのような手法でITインフラを刷新したのか、以下ではその詳細を紹介する。

人口減少、節水の発展――事業環境は厳しい

 日本鋳鉄管は、1937年設立(1960年現社名に改称)。浄水場から水を運ぶ鋳物の配水管の製造・販売が事業の約9割を占めており、社員数約260名という企業規模ながら、水道管の市場では第3位である。その他、下水用マンホールの蓋、ポリエチレン樹脂製のガス管など、私たちの暮らしに欠かせないインフラを支えている企業だ。

 主に道路下に埋められている配水管は、日本における水道の大動脈。1970年代の高度成長期に整備されたものがほとんどで、法的な耐用年数である40年を超えているものが多い。そのため交換が相次いでいる――という話かと思うと、実はそうではない。

 人口減少に加え、さまざまな機器の節水機能が発達したことにより、水道水の使用量が減少しているため、水道の運営資金となる料金収入も減少し、配水管の交換や浄水場の整備がなかなか進まないのが実情だ。その結果、同社のように配水管などを供給している企業の事業環境は、非常に厳しくなっているという。

脆弱なオンプレ「たまたまトラブルがなかっただけ」

日本鋳鉄管 代表取締役社長の日下修一氏

 大手鉄鋼会社の製鉄所で所長を務め、2018年6月に日本鋳鉄管の代表取締役社長に就任した日下修一氏は「当社は、コスト削減、経営の効率化を図っていかなければならない状況にあります。しかし私が就任した当時のシステムインフラは、さまざまな問題を抱えていました」と話す。

 問題の1つは、サーバルームの環境である。当時、基幹システムのサーバは久喜工場(埼玉県久喜市)の一角に設けられたサーバルームに置かれていた。一定の耐震強度を持たせたり、雷の多い地域であることからサージトラップを随所に仕込んだりと、できる対応はしてきた。しかし企業にとって非常に重要な、基幹サーバを管理する場所としては、脆弱と言わざるを得ない環境だった。

 もう1つは、システムの管理体制の問題である。システム担当者は「実質1.5人」という体制で、日常的な管理もなんとかやりくりしている状態。もし災害や事故など緊急事態が発生すれば、この体制では到底対処することはできない。一部の機能を福岡の支社に分散してはいるものの、冗長性もまったく不十分で、BCPの観点からも何らかの対策は必須だった。

日本鋳鉄管の渡邊克也氏

 また、そもそも基幹システムの運用環境に不安がある状態では、新たなシステムの導入やIoT化など、経営課題解決のための環境整備に着手することができない。これからの取り組みに向けたインフラのベースとしても、まず基幹システムの安心感や堅牢性はすぐに確保しなければならなかった。

 「全社の基幹システムが、非常に危うい環境・体制で運用されている。早く手を打たなければ大変なことになるし、次の手を打つこともできない。強い問題意識を持ちました」と日下氏。企画部 システム室長の渡邊克也氏も「従来の環境、運用に慣れてしまって、危機感を感じなくなっていました。今までは、たまたま大きなトラブルがなかっただけなのかもしれません」と話す。

石狩データセンターへの移設を決断

 「仮にオンプレのまま、ハードや環境を強化したとしても、現在のリソースでは何か起こったときにリカバリーすることは難しい。社内に投資しても根本的な解決には至らないので、専門の方々にお任せするほうが絶対にいい。そこに迷いはありませんでした」と日下氏。オンプレでの運用に限界を感じた日本鋳鉄管がパートナーとして選んだのは、さくらインターネットだった。

さくらインターネットの三國雄太氏

 さくらインターネットはハウジング、レンタルサーバ、VPS、またクラウドなど、幅広いサービスを提供しているのが特徴。東京、大坂、北海道の石狩にデータセンターを持っている。今回の事例でサポートを手掛けた、さくらインターネットの三國雄太氏は「既に購入されているハードウエアなどを全部捨てて移行するのはもったいないので、既存の資産を生かしながら、これから新しく導入するものには、クラウドなどの外部リソースを活用するといったご提案をしました。また社外にサーバを置くことで、目が届きにくくなる不安も解消できるように、今までの渡邊様の業務をヒアリングしながら、管理面もできるだけ当社側で引き受けられるように考えました」という。

 日本鋳鉄管が選んだ方法はこうだ。基幹サーバの更新時期と重なったこともあり、さくらインターネットの専用サーバを活用しつつ、既存資産の移設先としてハウジングを併用。久喜工場内の機能を石狩のデータセンターに移行し、東京のデータセンターと併せて冗長性を持たせている。管理もさくらインターネットの運用サービスを利用することで、システム担当者の負荷を軽減した。今回の移行は、喫緊の問題を解決することを目的としたステップで、将来的にはクラウドの活用も視野に入れている。

 システムの移行作業は、最も重要な基幹システムをさくらインターネットの専用サーバに移設することからスタート。ゴールデンウィークを利用してほとんどの物理サーバを移し、最終的には11月にすべての移設を完了した。移行プロジェクトの中で最も苦労したのは、移行計画を立てることだという。「基幹サーバの更新も含め、既存ベンダーの協力も得ながら、どういうステップで移設するかをスケジュールしていくのはとても難しく、計画ができるまで半年ぐらいかかりました。計画においても、さくらインターネット様から提案いただいたり、注意点などのアドバイスをいただいたりして、とても助かりました」(渡邊氏)。

堅牢性、コストメリット、周辺サービスの充実

 日本鋳鉄管がさくらインターネットを選んだ理由の1つは、石狩のデータセンターだ。その堅牢性は、2018年9月に発生した北海道地震で、北海道全域が「ブラックアウト」した際にもまったく障害がなかったことが証明している。2019年10月、関東地方が猛烈な台風に襲われたときも、安心していられたという。「今まで台風は恐怖でした。問い合わせの対応に追われ、一晩中モニターをにらんでいる状態でしたが、今回は何のトラブルもありませんでした」と渡邊氏はいう。

 石狩の気候を生かしてサーバから発生する熱をコントロールし、ランニングコストを引き下げる工夫も施されているため、コストメリットもある。また関東圏に主たる拠点を持つ日本鋳鉄管にとっては、BCPの観点からも石狩という遠隔地は理にかなっているうえ、意外とアクセスもいい。「総合的に考えてリーズナブル」と日下氏は評価する。

 幅広い周辺サービスがあることもポイントだ。例えば専用サーバもその1つ。「当初は単純にサーバを移行するという発想でしたが、基幹システムのサーバ更新を控えていたことから、専用サーバのサービスを提案いただき、コストをはじめ、いろいろなメリットがあることがわかりました」と渡邊氏。

 運用も任せられるため、渡邊氏は日々の「サーバのおもり」から開放された。「これまでは日々の保守に走り回っている状態でしたが、社員が使いやすいシステム、経営課題に応える方法などを考えることに集中できるようになりました。仕事に対する考え方や取り組み方が変わってきたと思います。今後のシステムのあり方を考えるうえで、インターネットでの情報収集では得られない、生の情報を提供してもらえることも非常にありがたいと思っています」(渡邊氏)という。

 またさくらインターネットは、データセンターからクラウドまで、状況やニーズに応じた環境やサービスを提供してくれ、経験も豊富だ。「今後の工場のIoT化も含めて、いろいろなアイデアも提示してくれると確信しています」と日下氏。日本鋳鉄管のように、段階的な環境の移行やシステムの拡張を目指している企業には、最適なパートナーといえるだろう。

システム担当者が本来すべき仕事ができる

 「コスト削減や効率化は当然のことながら、より詳細なデータを取得できれば、もっと的確な会社運営ができるはずだと思っています。今回、そこに進むためのベースができたことで、可能性がものすごく広がっています。最大の効果は、1.5人のシステム担当者が、日常の保守で手一杯という状態から、会社のシステム戦略という高度なことを考える時間ができ、本来すべき仕事ができる状態になったことだと思います」(日下氏)。

 日本鋳鉄管では、システムインフラのベースが整ってきたことから、既に経理システムの更新に着手している。次なるステップとしては、生産現場から挙がってくるデータの粒度の詳細化や即時性などIT化を進め、経営判断を支援する環境を強化していく計画だ。さくらインターネットの柔軟な提案や豊富なノウハウが、日本鋳鉄管の理想像に向けた取り組みを後押ししている。

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