自動車開発において熱設計に対する要求が高度化している。ECUの用途が多岐にわたり使用環境も厳しくなる中で、駆動周波数は増加しており、電子ハードウェア設計の中で熱問題の解決は避けて通れない。だが従来型の実験による熱設計では時間とコストがかかり、大きな設計変更も発生。問題回避のためのマージンも製品競争力に影響する。このような製品開発の変化により、プリント基板のパターン設計前に、ECUに搭載されている全ての素子の保証温度を成立させなければならない。デンソーではこの課題に、電子機器専用熱設計支援ツール「Simcenter Flotherm」(以下Flotherm)を活用。モデルベース開発による“熱設計のフロントローディング”を実現している。
ありとあらゆるものに電子部品が使われている現在、熱設計に対する要求は増加し、かつ高度化している。その顕著な例が自動車だろう。1台の自動車に使われるECU(電子制御ユニット)はますます多くなり、高温な環境下にさらされるエンジンルームにもECUが数多く設置されるようになっている。それと並行してコンピュータ制御の駆動周波数が高くなっている点も見逃せない。使用するアクチュエータの負荷特性による電圧や電流の変化に応じて、素子にかかる発熱量も異なってくるため、実機を利用した実験で制御中の各素子の発熱量を確認する必要がある。
このような理由から、これまで熱設計は実験によって行われてきた。実験は、多くの知見を得る機会ではあるが、時間とコストがかかるという課題がある。しかも実験をするには、その部品、あるいは製品と同等レベルのモノが必要なことから設計の上流工程では実施しづらく、また実験結果によっては部品や設計を見直す可能性もあることから、大きな設計変更にもなりかねない。
マージンの課題もある。問題が起こらないよう余裕を持たせるための設計マージンは必要だが、半導体パッケージ、部品などマージンが個別に積み上がっていくと、もはや製品が成立しなくなってしまう。成立させるには、より高温に耐え得る部品を使用しなければならないことになるが、結果、製品価格が上がり、競争力にも影響する。
こういった課題を解決するために注目されているのがシミュレーションだ。日本を代表する自動車部品メガサプライヤーのデンソーでは、電子機器専用熱設計支援ツール「Flotherm」を活用して、モデルベース開発(MBD)による“熱設計のフロントローディング”を実現している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:株式会社IDAJ
アイティメディア営業企画/制作:TechFactory 編集部/掲載内容有効期限:2019年8月19日