製造現場では“ヒヤリハット”を教訓とした安全管理面でのPDCAサイクルが定着している。一方で同様に安全性や工場の安定稼働を脅かす制御システムのセキュリティについては消極的な動きが目立つ。製造現場がセキュリティ対策に消極的なのはパフォーマンスが落ちる懸念があるからだが、本当にそうだろうか。運用性を確保した上で工場セキュリティを強化する方法を紹介する。
製造業において安全管理や業務の継続的な改善は、最重要課題である。特に現場では、製品の品質に影響を及ぼす「5M(Men、Methods、Machines、Materials、Measurements)」を適切に管理し、製品の競争力を高めていく姿勢が求められる。また、「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」を徹底することで、作業効率や在庫回転率の向上、サービスの改善などに務めることは言うまでもない。
しかし、同時に日々の現場では、突発的なトラブルやミスにヒヤリとする「ヒヤリハット」を経験することも少なくない。その原因は運用上のヒューマンエラーや技術的な不具合、組織内の連絡ミスなどさまざまだ。これを放置すれば、重大な事故を起こしかねない。ヒヤリハットが発生した段階で問題を詳らかにし、改善点を可視化したうえで、PDCA(計画、実行、評価、見直し)サイクルに取り込む必要がある。グローバルで競争に晒されている製造業にとっては、当たり前のプロセスだ。
では、制御システムのセキュリティにおけるヒヤリハットについてはどうだろうか。
近年、制御システムを取り巻くセキュリティ脅威は増大している。日本でも設備系端末がウイルス感染し、生産が数日停止した被害事例が報告されている。こうしたセキュリティ脅威が発生すれば、システムの停止はもちろん、製品の生産停止、不良品の製造、製品関連情報の消失など、深刻かつ大規模な被害が生じる可能性がある。自社だけでなく、取引先にも影響を及ぼした場合には、信用が一気に失墜する。日々の安全管理や改善活動と同様、制御システムのセキュリティも、最重要課題であることを認識しなければならない。
とはいえ、製造業に携わる多くの人はジレンマを抱えているのが現実だろう。
工場で働く人々にとって最大の関心事は工場を止めないことだ。それ以外のことは“余計な作業”でしかない。そのため制御システムを守る制御システムセキュリティについても、工場の生産性に影響を及ぼさず、できる限り運用しやすいものが求められているといえる。
実際にMONOistが行った読者調査では「制御システムへのセキュリティ対策で重視するポイント」として「導入コスト」(66.7%)「運用コスト」(66.7%)のコスト面での問題に次いで「運用のしやすさ」に多くの回答が集まった。
この「運用性」という点において、残念ながら、製造現場ではセキュリティ対策の改善に消極的な向きがある。しかし、実際にはこれらを両立させる方法が存在している。
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アイティメディア営業企画/制作:TechFactory 編集部/掲載内容有効期限:2014年10月25日