“紙頼み”な製造現場から脱却、工場スマート化へと導くタブレット&PC活用法:Windows 10 IoT Enterprise LTSC搭載で製造現場に特化
生産性向上や見える化/トレーサビリティ確保にはデジタル化が欠かせない。だが、生産工程で必要なマニュアルや作業指示書はいまだに紙に頼っている。工場スマート化の実現には、製造現場の課題を熟知して作られたタブレットやPCが必要だ。
工場内へのIoTの導入などによって製造装置のスマート化が進んでいる。だが、逆にその流れから取り残されているのが現場の作業者たちだ。生産工程で不可欠なマニュアルや仕様書、作業指示書などについて、いまだに“紙頼み”を続けている製造現場は少なくない。
なぜ人の作業においてデジタル導入が思うように進まないのだろうか。最大の理由は、一般ビジネス用のタブレットやPCを工場内に持ち込んだ場合の使い勝手の悪さにある。自席から会議室、あるいはプロジェクトの関係者がいる他部署のフロアなど、仕事をする場所へ「どこでも自由に端末を持ち運んで使う」といったことや「OSの最新機能を取り入れるためにアップデートをしっかり実施する」といった、オフィスでは当たり前にできていることが工場内では困難なのだ。
例えば工場内でタブレットを持ち歩くとなれば、常に片手が使えない状態となってしまう。また、画面操作をするたびに手袋を外さなければならない。これらは作業の安全性を守る上での大問題となる。
OSのアップデートも安易に実施するわけにはいかない。万一アプリケーションとの互換性の問題が起こって仕様書や作業指示書などが配信できなくなった場合、生産活動そのものがストップして、トレーサビリティも効かなくなってしまうおそれがあるからだ。
作業者を含めた本当の意味での工場のスマート化を実現するために求められるのは、こうした製造現場の課題を熟知した上で作られたタブレットやPCにほかならない。このような“製造現場に特化したタブレットやPC”のメリットや活用法を紹介しよう。
製造現場に特化したタブレット&PC
製造業が抱えている課題と幅広いニーズに応えるべく、工場内での利用に特化したタブレットやPCの本格展開を進めているのがエプソンダイレクトだ。
エプソンダイレクトといえば1993年の設立時から、インターネットでの直販を主体としたBTO(受注生産)の個人向けPCメーカーとして知られているが、2015年頃から法人向けの特定用途端末にも注力してきた。特定用途端末とは、受付業務や接客業務、デジタルサイネージ、POS、自動精算機、医療機関における検査装置、調剤薬局で利用する散薬分包機などを制御するPCなどを指す。エプソンダイレクトは、この新たなターゲットに製造業を定めたのだ。
エプソンダイレクト 営業推進部部長 小泉宏美氏は「エプソングループ自身も製造業であり、紙からの脱却や省人化などお客さまと共通の問題意識を持っています。そうした観点からあらためて製造現場を見たとき、私たちがこれまで培ってきた特定用途端末のノウハウは、必ずお客さまの課題解決に貢献できると考えました」と語る。
そのエプソンダイレクトが、製造業向け特定用途端末として今春リリースしたのが、10.1型タブレットPC「Endeavor JT50」だ。店舗のPOSレジや受付/発券端末、倉庫などのバックヤードなど幅広い現場業務で活用されてきたWindowsタブレットの新製品で、製造現場のニーズにも応える特徴を備えている。
まずは純正で用意された豊富なプションだ。例えばEndeavor JT50に「マルチジャケット」を装着すれば、高さ120cmからの落下の衝撃からも端末を保護できる。これにさらに「ハンドホルダー」や「ショルダーベルト」といったオプションを組み合わせれば、障害物の多い工場内でも安心して端末を持ち運ぶことが可能になるとともに、製造現場での作業性も大きく向上することができる。
もちろん端末を持ち運ぶだけでなく、特定の場所に固定して使いたいといった要望もあるだろう。そんな製造現場で役立つのが「VESA対応自立スタンド」や「壁掛け金具」といったオプションで、Endeavor JT50を据え置き端末やモニタリング端末として利用することが可能となる。
さらに端末を固定して利用する場合に、「バッテリーなし」のモデルを選べることも製造現場にとっては非常に大きなポイントだ。
エプソンダイレクト 営業推進部 営業グループ 大波賢一氏は、「バッテリーを搭載した端末をAC電源に接続したまま長期間にわたって利用していると、通常よりも早いペースで劣化が進んでいきます。バッテリーが膨張し、劣化による故障を招く恐れもあります。そんな環境下で作業している製造業のお客さまから待ち望まれていたのが、このバッテリーなしのモデルなのです」と語る。
Windows PCの“専用システム化”を実現する組み込みシステム向けのOS
肝心の操作感はどうだろうか。Endeavor JT50のタッチパネルは、手袋を装着したままで操作できる設定があるのがありがたい。「薄手のラテックス手袋はもとより、タッチ感度を調整すれば厚手のゴム製の安全手袋にも対応することができます」と大波氏は言う。
さらにEndeavor JT50は、あたかも専用システムであるかのように特定アプリケーションに利用を限定したカスタマイズを行うことができる。これを可能としたのが、組み込みシステム向けの「Windows 10 IoT Enterprise LTSC」というOSの採用だ。一般向けの汎用OSとは異なり、特定用途の端末での利用を想定して強固なセキュリティーや長期間にわたる安定運用をサポートするのが特徴だ。
「当然、製品の企画段階ではより汎用的なWindows 10 Proを採用する選択肢もありましたが、製造業の業務形態に合わせて特化する方向にかじを切りました」と大波氏。「お客さまの現場の声を一つ一つ丁寧に拾いながら、それを製品に反映させていくことが私たちのソリューション展開の肝です」と小泉氏も強調する。
Windows 10 IoT Enterprise LTSCを採用したことで、具体的に製造現場のどんな課題に応えていくのか、もう少し詳しく見てみよう。
まずはOS名称の一部にもなっている「LTSC(Long-Term Servicing Channel)」というアップデートモデル(サービスモデル)だ。簡単に言えば、通常のWindowsで年に2回のペースで実施されているFU(機能更新プログラム)を適用せず、最長10年間にわたり機能を固定化したまま運用を続けることができる。
「これによりOSのアップデート後にアプリケーションが正常に動作しなくなるリスクを排除するとともに、アプリケーションの改修や再検証に費やす工数を大幅に低減します。一方で新たに発見されたOSの脆弱(ぜいじゃく)性を修正するセキュリティパッチ(品質更新プログラム)は提供されるため、安全性はしっかり確保することができます」と大波氏は語る。
加えてもう一つ、Windows 10 IoT Enterprise LTSCで注目すべきが「ロックダウン機能」だ。指定したアプリケーション以外を起動できなくしたり、不要な操作は受け付けないようにするもので、これにより前述した端末の「専用システム化」が可能となるのだ。
Windows 10 IoT Enterprise LTSCで可能となるのはそれだけではない。「余計なメッセージや通知を非表示にできる」、「複数ユーザーによる利用でも常に同じ状態で起動できる」、「キーボードフィルターで誤操作を防止する」といった機能を利用してシンプルな操作を実現する一方、「USB メモリの使用を禁止する」といった設定によりマルウェア感染や情報漏えいを防止するなど、セキュリティ強化を図ることもできるのだ。
なお、Windows 10 IoT Enterprise LTSCについてもカーネル部分はWindows 10 Proと共通しているため、Windows 10 Pro上で開発したアプリケーションをWindows 10 IoT Enterprise LTSCに展開することにまったく支障はない。
エッジコンピューティングの要求に応えるデスクトップPC
さらにエプソンダイレクトでは、MES(生産実行システム)と連携した製造ラインの制御、あるいはAIを活用した外観検査システムと連携したカメラ制御など、製造現場で高まるエッジコンピューティングのニーズにも対応可能な高度な処理性能を備えた小型デスクトップPCとして「Endeavor SG100E」を提供している。
Endeavor SG100Eの最大の特徴は、とにかくコンパクトであることだ。幅約74mm×高さ約185mm×奥行約207mmで、正面から見たサイズ感は500mlのペットボトルと同程度。このコンパクトな筐体に、インテル Core i9 プロセッサーや最大64GBのメモリ、M.2 SSD、さらにはNVIDIA GeForceシリーズやNVIDIA T1000(8GB)、NVIDIA RTX A2000(6GB)といった高性能なグラフィックスボードまで用途にあわせて搭載できるのだ。
「私たちは数あるPCメーカーの中でも特に筐体の小型化にこだわってきたメーカーですが、それでもここまでの小型化を実現するのは本当に苦労しました。特に問題となるのがグラフィックスボードを搭載した際の熱対策です。筐体底面から空気を取り入れ、上面から廃熱する冷却の仕組みを新たに設計したことで、ようやくこの課題を解決することができました」と大波氏は振り返る。
ここまで紹介してきたように、Endeavor JT50やEndeavor SG100Eはまさに製造現場のデジタル変革に適したプラットフォームとなり得る。加えてエプソンダイレクトはその運用を長期間にわたって支えていくサポート体制も拡充している。
一般的なPCメーカーが提供している保守サポートは5年間ほどだが、「エプソンダイレクトでは最長6年の定額保守契約を選択できる他、さらにキッティングBTOサービスと組み合わることで保守期間を7年間に延長できるメニューも用意しています」と小泉氏は語る。これは工場内のさまざまな設備(減価償却資産)の耐用年数が6年から10年以上といった長期に及ぶことも考慮したもので、「工場全体の設備のライフサイクルと足並みをそろえた投資が可能となります」と大波氏は訴求する。
ちなみにキッティングBTOサービスとは、アプリケーションのインストールやマスターディスクの作成および出荷段階での適用、管理用ラベルの貼付といった作業を代行するサービスだ。このサービスを利用することで、煩雑な手間のかかる現場での導入作業は劇的に軽減される。
また、エプソンダイレクトからPCの導入を検討している法人に対しては、「実機を1カ月間無料でお試しいただける貸し出しプログラムを実施しています」(小泉氏)とのことなので、興味を持った方はこれを機にぜひ動作検証から始めてみてはいかがだろうか。
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提供:エプソンダイレクト株式会社
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