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ハードウェア売り切りは過去のものに、製造業のサブスクを成功させる鍵はサービタイゼーション

デジタル変革が加速する中で、製造業はハードウェアの売り切りからサブスクリプションに代表される新たな収益を得るビジネスモデルが注目されている。この新しいビジネスモデルは、ハードウェア以上にソフトウェアの役割が増す。そしてそのソフトウェアには“顧客”の存在を強く意識した4つの要素が求められるという。

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 IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)に代表される技術の登場で世界の製造業のデジタル変革が加速している。しかし国内の製造業に目を向けてみると、ハードウェアを中心とした自社製品に対するこだわりが強く、それらの製品と連動する形で新たなサービスを提供するような、いわゆる「モノ売り」から「コト売り」への移行では大きく後れを取っているのが実情だ。

 こうした停滞は国内の製造業にとっての深刻な経営リスクになる恐れがある。従来のハードウェアの売り切りとは異なる、新たに収益を得る手段としてサブスクリプションビジネスが市場に定着しつつあるからだ。実際に米国のトップ企業100社はソフトウェアなどのサービスビジネスを中心にサブスクリプションで収益を得ており、より柔軟な従量課金のサービスモデルまで取り入れて顧客のニーズに応える企業も増えている。

 多くの国内の製造業は、デジタル変革を軸とした新たなサービスによる収益化の戦略を練ることが重要なことは理解しつつある。その一方で、何をどうすればいいのかがまだ腹に落ちていない企業が多いのもまた事実だ。モノづくりによって高い顧客満足を得てきた以上、やはりモノへのこだわりは変わらず強くあり、いったん製品志向に走り出すと、顧客の求める声が耳に届かなくなる。「高付加価値だがイニシャルコストが高く、運用面で使い勝手が悪い」「使いたい機能、使わない機能があるのに一律価格で柔軟性がない」といった顧客の声が、カスタマーサポートや営業を通して聞こえてこないだろうか。

 もちろん、これらの顧客の声に応えていくことは容易ではない。これまで得意としてきたハードウェア以上にソフトウェアの役割が増すことになるからだ。従来のソフトウェアはハードウェアを制御するためのものだったが、これからは“顧客”の存在を強く意識した新たな要素を持つソフトウェアが必要になってくる。そして、その新たな要素として挙げられるのが「新たな収益の創出」「カスタマーエクスペリエンス」「運用効率の向上」「ビジネスインサイト」の4つだ。

 では、どうすればソフトウェアにこれらの新たな要素を組み込んでいけるのだろうか。以下に見ていこう。

ソフトウェア収益化をゼロから自力で構築するのは容易ではない

 とはいえ、新たにソフトウェアを活用して顧客満足を得て収益化するビジネスモデルをゼロから自力で構築するのは容易ではない。ライセンス設計のプロでない限り、設計段階で将来的なビジネスモデルまで考慮した柔軟でスケーラブルなデザインを検討することはなかなか骨が折れるし、自社内製のメンテナンスコストが想定以上にかかっていたりすることもある。

 そうなると信頼のおけるプラットフォームやパッケージなどを活用することが現実的な選択肢となるだろう。そうした中で注目すべきなのが、サブスクリプションモデルを容易に適応できることで国内外を問わず定評のあるタレスのライセンス管理ソリューション「Sentinel」なのだ。

 タレスDIS CPLジャパン ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 本部長の高橋均氏は、「現在、多くのお客さまは、デジタルトランスフォーメーション(DX)への課題を抱えています。実は、それらの課題はお客さまのモノへの考え方(思考の中)に潜んでおり、効果的なソフトウェアの収益化戦略を自社に適応する妨げとなっているのです」と語る。

タレスDIS CPLジャパン ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 本部長の高橋均氏
タレスDIS CPLジャパン ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 本部長の高橋均氏

 目指すべきは、顧客体験に基づいた柔軟性のあるサービスの提供や、顧客の機器の利用状況などをデータとして収集しインサイトとして生かすことだ。「今までのモノを売るという考え方から、顧客とつながって、そのモノの上にあるサービスを売るという考え方へ変えることが重要です。そして、弊社のSentinelソリューションがお客さまのDXの成功を具現化します」(高橋氏)。

 実際にSentinelソリューションは、ライセンス管理の世界市場において51%のシェアを獲得しており、32の業界、100以上の国と地域、1万社を超える企業に導入されている。そして、これらの顧客の65%を占めるのが製造業だ。高橋氏は「国内でも製造業のお客さまからの引き合いが最も強く、2019年度は前年度比で25%成長しました」と強調する。

 このSentinelソリューションとはいかなるものなのか、さらに掘り下げてみよう。顧客の声に応えていくソフトウェアには、「新たな収益の創出」「カスタマーエクスペリエンス」「運用効率の向上」「ビジネスインサイト」という4つの要素が必要になる先に述べたが、まさにこれらを全てカバーすることがSentinelソリューションの特長となっているのだ。

ソフトウェアの収益化に必要な4つの要素
ソフトウェアの収益化に必要な4つの要素

「新たな収益の創出」と「カスタマーエクスペリエンス」

 それではまず、1つ目の「新たな収益の創出」から見て行こう。ソフトウェア収益化では、ソフトウェアを中心とした新しいビジネスモデルと技術により新たな収益の流れを創出しなければならない。ハードウェアにひも付くサービスの提供により定額の利用料を得るサブスクリプションビジネスは、まさにこの新たな収益の流れといえるだろう。そこで必須となるのが、ライセンス契約を履行するデジタル基盤である。定額課金であれ従量課金であれ、大前提としてライセンス契約が正しく履行されなければビジネスとして成り立たない。

タレスDIS CPLジャパン ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアアプリセールスコンサルタント ビジネス開発部 部長の前田利幸氏
タレスDIS CPLジャパン ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアアプリセールスコンサルタント ビジネス開発部 部長の前田利幸氏

 Sentinelソリューションは、オンラインかオフラインかの違いを問わず、ソフトウェアのあらゆる稼働環境下でライセンス契約を履行する。さらに、「1カ月無料」などに代表されるトライアルや、オプション設定によるアップセル、クロスセルなどへの対応も容易に実現する。

 タレスDIS CPLジャパン ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアアプリセールスコンサルタント ビジネス開発部 部長の前田利幸氏は、「多様なライセンスモデルに対応し、製品やサービスの検討から購入までのカスタマージャーニーを包括することで、オプション機能まで含めた収益化を支援します」と語る。これにより顧客ニーズの変化に応じた新たなパッケージのプランを迅速に組み立て、市場に投入することが可能となる。

Sentinelソリューションによる「新たな収益の創出」
Sentinelソリューションによる「新たな収益の創出」

 2つ目の「カスタマーエクスペリエンス」は、ソフトウェア収益化を成功させる継続的な顧客満足に必要となるものだ。顧客にサブスクリプション契約を継続してもらい、収益を上げ続けるためには、顧客体験が充実していなければならない。そこで重視しなければならないのがビジネスプロセスの最適化だ。

 前田氏は「Sentinelソリューションは、トライアルからライセンスの購入、アクティベーション、メンテナンスまで、ソフトウェアビジネスのライフサイクル全体にまたがる顧客体験をデジタル化します。また、お客さま一人一人にフィットした最適なビジネスプランを提供することで、製品やサービスの長期的な利用を実現します」と語る。

Sentinelソリューションによる「カスタマーエクスペリエンス」
Sentinelソリューションによる「カスタマーエクスペリエンス」

「運用効率の向上」と「ビジネスインサイト」

 従来の、ハードウェアの売り切りビジネスと異なり、サービスの提供による顧客満足度の向上には運用コストがかかる。3つ目の要素となる「運用効率の向上」は、この運用効率を改善するためのものだ。特に、「カスタマーエクスペリエンス」において高度な顧客体験を実現しようとすると運用が複雑になりがちなだけに、このアプローチが欠かせない。

 Sentinelソリューションには、ライセンスの管理を担っているバックオフィス業務を自動化する機能がある。「ライセンスの業務プロセスやワークフローをデジタル化し、ERPやCRMなどの基幹システムと連携することで、製品やサービスの注文からライセンス契約までに要する時間を短縮するとともに労力を軽減します」(前田氏)。

Sentinelソリューションによる「運用効率の向上」
Sentinelソリューションによる「運用効率の向上」

 4つ目の要素となるのが、顧客のデータからビジネスの機動性、俊敏性を強化する「ビジネスインサイト」である。記事の冒頭で、IoTやAIなどの新技術がデジタル変革を加速させていることを述べたが、ソフトウェアを活用すれば、データを収集、分析することにより、顧客行動の裏側にある意図を把握してその心をつかみ、ライセンス契約の締結や更新に向けた継続的なエンゲージメントを高めるための施策を見いだせるようになるのだ。

 前田氏は「お客さまを知るためには、まずお客さまとつながる必要があります。お客さまが利用しているソフトウェアや機能、利用時間などの詳細なデータをリモートで収集し、お客さまのことを理解します。これらの情報を基に市場の動向を把握し、ビジネスの方向転換を図ったり、変化し続けるお客さまのニーズにフィットした新たなビジネスモデルを検討したりすることができます」と訴える。

Sentinelソリューションによる「ビジネスインサイト」
Sentinelソリューションによる「ビジネスインサイト」

 Sentinelソリューションの具体的な構成は、ライセンスなどを管理して運用効率を向上する「Sentinel EMS」、自動ソフトウェア更新やメッセージ通知を行う「Sentinel Up」、幅広いデバイスのソフトウェアを保護/管理する「Sentinel Fit」、あらゆるエンタープライズソフトウェアを保護/管理する「Sentinel RMS」といった主要コンポーネントから構成されている。また、ハンズオントレーニングやプロフェッショナルサービス、プレミアムテクニカルサポートといったサポートメニューを用意している。まさに、こうした手厚いサポート体制が、世界全体で1万社以上の導入につながっているわけだ。

製造業4社のSentinelソリューション採用事例

 多くの製造業に採用されているSentinelソリューションだが、実際にどのように活用されているのだろうか。ここからは4社の採用事例について、従来の課題を解決しながら、顧客の声に応えるための4つの要素である「新たな収益の創出」「カスタマーエクスペリエンス」「運用効率の向上」「ビジネスインサイト」をどのように実現していったかを見ていこう。

製造業4社のSentinelソリューションを採用して得た成果の概要。キャンデラ(左上)、ストライカー(右上)、ウォーターズ(左下)、クラース(右下)
製造業4社のSentinelソリューションを採用して得た成果の概要。キャンデラ(左上)、ストライカー(右上)、ウォーターズ(左下)、クラース(右下)

 グローバルに医療用美容機器を提供しているキャンデラ(Candela)は、主力製品である医療用美容整形に用いるレーザー装置を販売するとともに、レーザー発振に必要な部品である変圧器の交換を中核とするメンテナンスサービスを展開していた。高橋氏は「レーザー装置の販売は典型的なハードウェア売り切り型の『モノ売り』ビジネスであるため、顧客満足のためのデータ収集ができていませんでした。また、変圧器の交換は収益源になっていましたが、変圧器の交換までに時間がかかるなど顧客の負担が大きいことが課題になっていました」と説明する。

 キャンデラはこれらの課題を解決するためにSentinelソリューションを導入。顧客が高価なレーザー装置を購入するという従来のビジネスモデルから、レーザー装置が発するレーザーパルスを使用するごとに利用料が発生するという顧客中心のビジネスモデルに移行することで「新たな収益の創出」につなげることができた。また、変圧器の交換については、データ収集に基づいて装置の稼働停止を最小限にできるようになり、さらに交換費用も無償にした。これによって、顧客であるクリニックとの継続的な関係性が深まり、「カスタマーエクスペリエンス」を実現できた。そして、これらの取り組みの結果として、顧客単価を従来比で77%増やすことに成功したのである。

 医療機器メーカーのストライカー(Striker)も、ハードウェア提供からサービスベースのビジネスモデルへの移行という課題をSentinelソリューションで解決した。従来は、現場のユーザーである医師が、ハードウェアドングルを使って機器のライセンスを有効化していたが、このドングルの出荷にコストと時間を要していた。そこで、ドングルの出荷を最低限に抑えるべく、Sentinelソリューションの導入に併せて新たなライセンスモデルを構築。医師が医療機器を使いたいときに使え、利用コストも病院の予算に合わせて適正化しやすくなるなど「カスタマーエクスペリエンス」を実現した。ライセンスを管理するバックオフィスとのスムーズな連携が可能になり「運用効率の向上」によるコスト削減も果たしている。

 当初、自社でのライセンス管理プラットフォームの構築を検討していたストライカーだが、Sentinelソリューションを採用することで早期に課題を解決することができた。同社の担当者は「それはわれわれの専門分野ではないことにすぐ気付きました。われわれの専門は外科医を助けることです。ラインセンシングのエキスパートではないのです」とコメントしている。

 計測機器メーカーのウォーターズ(Waters)は、ライセンスの手作業による管理やソフトウェア更新の遅さなどにより顧客満足に問題を抱えており、顧客のメンテナンス状況の管理が不十分で契約更新率も低迷していた。何より、顧客に販売したソフトウェアの数以上の利用者がいることが大きな課題になっていた。

 そこで、Sentinelソリューションによって、新しいライセンスモデルの導入とサブスクリプション化、従量課金を実現。ソフトウェア更新を物理メディアからオンラインに変更し、契約のあるユーザーだけがソフトウェアを利用できるようになるなど「新たな収益の創出」が可能になった。また、顧客のメンテナンス状況をしっかり管理することで顧客との接点を維持・強化し、次の提案につながる「ビジネスインサイト」も得られるようになった。

 農業機械メーカーのクラース(Claas)は、ハードウェアであるトラクターと、トラクターの機能を制御するソフトウェアを分けて管理し、ソフトウェアによる新機能の販売で収益を確保したいと考えていた。従来、トラクターのソフトウェア機能は工場でしかアクティベーションできず、永久ライセンスとして提供されていたからだ。

 Sentinelソリューションを導入することで、トラクターの自律制御やGPSの精度向上、作物の収穫量測定といった新機能をオンラインで有効化できるようになり、これらをサブスクリプションと従量課金ベースのライセンスモデルで提供できるようになった。つまり、顧客である農家が最新の機能を柔軟に利用できる顧客中心のビジネスに移行したことで「新たな収益の創出」が可能になったのだ。さらには、農業機械の見積もりから入金までのオーダープロセスも自動化して「運用効率の向上」を実現した。

 これらのグローバル企業の動きを見たとき、日本の製造業にもできるだけ早期の取り組みが望まれる。特に多くの企業がコロナ禍にある今だからこそ、それがいえるだろう。前田氏は「今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、グローバルのサプライチェーンが破綻し、多くの製造業が影響を受けました。ソフトウェアビジネスにおいてもビジネスを止めないための運用プロセス合理化が改めて必要とされています。そして、今後しばらく続くと危惧される経済の低迷にいかに対応していけばよいのか。現状のビジネスの在り方を見直し、安定的な収益を上げていくためのソフトウェアによる収益力の強化が急がれます」と説く。

 予測不可能な将来に柔軟に対応し、製造業が持続的な成長を遂げていくためにも、ソフトウェアによる収益化が必要だ。この機会に、ソフトウェア収益化に有効なSentinelソリューションを検討してはいかがだろうか。

タレスDIS CPLジャパンの高橋均氏(右)と前田利幸氏(左)
タレスDIS CPLジャパンの高橋均氏(右)と前田利幸氏(左)

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