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量子アニーリングマシン市場で圧倒的性能差の実現を目指すNECNEC 技術勉強会

NECは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで、他のメンバーとともに、2023年ごろの実用化をめどに、理想の量子アニーリングマシンの開発と、簡単に量子アニーリングマシンを使いこなせるソフトウェアの開発に取り組んでいる。長年のゲート型量子コンピュータの研究開発資産を生かし、量子アニーリングマシン市場で圧倒的性能差を実現することを目指す。

» 2019年02月01日 09時00分 公開
[長町基TechFactory]

 NECは東京工業大学、早稲田大学、横浜国立大学とともに、NEDOによる新規事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発」に採択された。

 同プロジェクトは、量子アニーリングマシンと共通ソフトウェア基盤の融合により、あらゆる産業領域の現実課題に対して、高速かつ精度の高い「最適化ソリューションプラットフォーム」を実現し、Society 5.0の社会システムの高効率化、高精度化の推進に寄与することを目的とする。

 「組み合わせ最適化問題」の高速解法のブレークスルーとして期待されている「量子アニーリングマシン」の課題である「コヒーレンス時間」と「集積性」を両立させ、国産の「量子アニーリングマシン」を実現するための要素技術開発を進める。

 量子アニーリングマシンによる組み合わせ最適化問題の求解は、同研究開発の共同提案者の一人である東京工業大学 西森秀稔氏と、門脇正史氏によって1998年に世界で初めて提案された。クラウドコンピューティングに、量子アニーリングマシンによる全く新しい計算原理が加えられることで、これまで時間的制約により精度の低い近似解法に頼っていた最適化問題を短時間で高精度に解くことができる、と期待されている。

 しかし、現状の量子アニーリングマシンは完成形ではなく、現在の超電導量子アニーリングデバイスが持つ課題である、高速計算の源泉とされる量子コヒーレンスと集積性の両立が求められている。

 NECでは、量子コヒーレンスと集積性の課題の克服に向けた、新しい量子素子の開発を推進しており、量子コヒーレンスを保つ時間が従来よりも2桁向上したことを実証した。これにより計算精度と速度の向上が期待される。今後は同プロジェクトにおいて、同量子素子の多ビット化と全結合方式の動作実証などに取り組む。



 このほどNECはメディア向けの技術勉強会を開催し、量子コンピュータの動向や仕組み、同プロジェクトの取り組みなどについてまとめて紹介した。以降でその内容をお届けする。

量子コンピュータにおけるNECの取り組み

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