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バイオ3Dプリンタを用いた神経再生技術、京都大学で開発Regenova 神経再生技術

京都大学はサイフューズと共同で、バイオ3Dプリンタを用いた末梢神経損傷に対する神経再生技術の開発に成功したと発表した。バイオ3Dプリンタで、細胞のみから成るバイオ3次元神経再生導管を作製した。

» 2017年03月30日 12時00分 公開

 京都大学は2017年2月27日、サイフューズと共同で、末梢神経損傷に対する新しい治療法としてバイオ3Dプリンタ「Regenova」を用いた神経再生技術の開発に成功したと発表した。同大学医学部付属病院の松田秀一教授らと佐賀大学の中山功一教授らの研究グループによるもので、成果は同月13日、米科学誌「PLOS ONE」の電子版に掲載された。

 Regenovaは、サイフューズが開発した細胞だけで3次元構造体を作製できる世界初のバイオ3Dプリンタだ。中山教授の研究成果を基に開発した2つの技術を用いている。1つは分離した細胞が凝集する現象を利用して細胞凝集塊を剣山に積層する技術で、もう1つは還流装置を用いた熟成技術だ。これまでに、軟骨組織や血管組織などを同プリンタで作製している。

 今回新たに、Regenovaを用いて細胞のみから成るバイオ3次元神経再生導管の作製に成功した。これをラットの坐骨神経損傷モデルに移植したところ、従来の人工神経よりはるかに良好で、自家神経移植に遜色ない神経再生効果を得られた。

 人工神経には細胞成分が乏しく、サイトカインなどの再生軸索誘導に必要な環境因子が不足していたのに対し、今回開発したバイオ神経3次元再生導管は線維芽細胞から作製しており、サイトカインの放出や血管新生が起こることで良好な再生軸索の誘導が得られたという。今後は非臨床POCを取得し、非臨床安全性試験をクリアし、3年後に医師主導治験を開始する予定だ。

 現在の末梢神経損傷に対する治療は、患者自身の下腿などの神経の一部を移植する自己神経移植術治療が主流だ。これは健常な神経を犠牲にするため、採取部位周囲の感覚神経まひや異常知覚の原因になる。そのため人工材料を用いた人工神経が開発されているが、自家神経移植術を超える治療成績は得られていない。また、人工神経に増殖因子や血管移植、細胞移植などを加えるハイブリッド治療も考案されてきたが、目覚ましい結果は得られていないという。

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